セルフ・リライアンスという生き方

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経営理念と企業価値をつなげる ~ 鎌倉投信・いい会社の経営者講演(ピジョン 山下茂社長)

鎌倉投信の結い2101の投資先である、ピジョンの山下社長の講演を聞きました。
鎌倉投信は2010年9月に投資開始。長期で保有し続けている会社の一つです。

1957年創業のピジョンは、哺乳瓶からスタートし、今ではヘルスケア、スキンケア、マタニティ、ベビーカー、保育事業まで手掛けるベビー・育児関連総合企業です。連結の売上規模は1,000億円超、中国を中心に、アジア、欧米にも進出し、今では海外売上比率が半分を超えるグローバル企業となっています。

山下茂さんは、就任6年目の第5代社長です。

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講演テーマは、「経営理念と企業価値向上」について。

ピジョンの経営理念は「愛」、社是は「愛を生むは愛のみ」です。
親が子供に注ぐ無償の「愛」の心と同じ心がなければ、「愛のこもった製品やサービス」は生み出せない、という精神に基づいています。そして、この理念を、Pigeon Way(ピジョン ウェイ)として、会社のビジョンと使命、基本となる価値観、行動原則にまで詳細に言語化し、グローバルに共有しています。

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ビジョンや理念が大事、と言っても、ただのスローガンで終わっている会社は少なくありません。理念をきれいごとではなく、具体的な業績や企業の成長にどうつなげるか。これは経営の大きなテーマでもあります。

どのようにPigeon Wayを浸透させ、価値を生み出しているのか、山下社長の話は示唆に富むものでした。

・会社の存在理由は、社会の役に立つこと。社会の役に立つには、他社が簡単に真似できないことをする。そうすれば、会社は競争優位を築けると同時に、社員も仕事に誇りと達成感を持てる。

・理念の共有が大切なのは、一人一人の仕事のゴールを明確にするとともに、経営資源を配分する優先順位を決めるため。特に、外国人の社員が増えた今、言語による理念共有の重要性は高まっている。

企業理念は具体的に言語化することが大切。社員がきちんと理解できて初めて成果につながる

・Pigeon Wayを浸透させるため、グローバルパスポートとして世界中の社員に配布。世界中で「Pigeon Way Meeting」を開き理解を進めている。今では、「そのやり方はPigeon Wayに合っているか?」という議論が現場で起こるまでになっている。

トップの役割は、会社のなりたい姿、大切にしたい価値観、それらを実現するための具体的な方法を社員に繰り返し語り続けること。そしてその進捗を確認し続けること。

・コーポレートガバナンスがホットなテーマだが、形式だけ整えても意味がない。理念とビジョンの理解があって初めて機能するもの。

・会社の存在理由よりも数値目標を優先させてはだめ。会社は売上や利益目標を達成するために存在するのではなく、会社の目的、使命を果たすために存在している。この順番が逆になってはいけない。

・もちろん、事業の結果として売上や利益は出ないといけない。もし、売上や利益が上がらないとしたら、経営理念がスローガンになってしまっているか、間違っているかのどちらか。

理念経営は、企業価値につながってはじめて意味がある。Pigeon Wayの進捗確認も、最終的には売上、利益、FCF(フリーキャッシュフロー)が持続的に成長できているかどうかで判断する。

・ピジョンの企業価値は、社会価値と経済価値からなる。育児の困りごとを解決し続けることによって「社会にとってなくてはならない存在」になれば、経済価値も高まる。社会価値と経済価値はトレードオフではない

・ピジョンの理念を理解できない投資家には投資してもらわなくてかまわない。理念を共有した株主に買っていただきたい。

Pigeon Wayが浸透した成果だけでなく、外部環境もあるとは思いますが、ピジョンの業績は近年着実に成長傾向です。

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(2018年1月期 統合報告書より)

 

鎌倉投信の投資する「いい会社」の要素に、経営理念が現場まで浸透し、ステークホルダー間で共有され、それが競争力の源泉になっている、という点があります。

「理念経営」というと精神論的経営のように思われがちですが、本当の意味での理念経営とは、とても合理的に説明可能なものであり、ピジョンのように、理念を企業価値の成長にしっかりリンクさせている経営だということですね。

そのためには、トップのリーダーシップのもと、具体的な行動原則にまでブレイクダウンし、社内で根気よく反芻し続けることしかないのだと思います。

ピジョンでは、社員がどのように理念を実際の仕事の成果につなげてきたか、「My Pigeon Way Story」としてシェアしています。社内だけでなく、顧客、取引先、投資家といった社外のステークホルダーとも理念を共有するいい取り組みです。

講演では、社内でもほとんど話したことがない、という山下社長のピジョン新卒入社以来の「わたしの履歴書」話も聞けました。タイの子会社社長時代、アメリカのランシノ社買収後の苦労話などは、ピジョン成長の歴史と重なります。

社会価値と経済価値の関係、会社の数字や業績の意味、理念の言語化など、今までに鎌倉投信の投資先の多くの経営者から聞いたことと重なることも多く、「やっぱりそうだよな」と納得できました。