不動産投資のニュースについて、経済評論家山崎元さんの最近のツイッターです。
4月8日の日経夕刊「第一生命、マンション投資」の記事で「運用利回りは3%台後半を想定」と。第一生命とGSが組んで業務としてやってこの利回りでは、一般のマンション投資環境は厳しいと見える。不動産市況等のリスクを考えるともう2%くらい欲しいと思う。
— Hajime Yamazaki /山崎元 (@yamagen_jp) April 11, 2014
元記事はこちらです。 第一生命がマンション投資 日生はオフィスビル開発
山崎さんの真意がはっきりは不明なのですが、上記のツイートに対する反応として、 「プロがやっても3%後半の利回りなのだから、素人では不動産は儲からない」というニュアンスの意見がいくつか見られました。 この流れには違和感があります。
利回りが低いのは価格が上がっているため
不動産の利回りは、「純収益÷物件価格」で表されます。
純収益は、簡単にいうと、賃料収入から維持管理費、修繕費、固定資産税等の経費を控除したネットの収入です。
例えば、収益1億円の一棟マンションを20億円で購入すれば、1億円÷20億円=利回り5%です。
そして、利回りと分子の収益、分母の価格は次の関係にあります。
・純収益が下がる(上がる) → 利回りは下がる(上がる)
・不動産価格が上がる(下がる) → 利回りは下がる(上がる)
今回のニュースの場合、投資対象は一棟ものの賃貸マンションで、そこそこの立地のものなので、家賃が大きく下がっている、ということはまずありません。
それにも関わらず、利回りが3%台と低いのは、不動産価格が(1~2年前よりも)上昇しているからです。 具体的には、「2年前ならもっと安く、5%ぐらいで買えた物件が、市場が盛り上がっているので3%台後半の値段でないと買えない」ことを意味します。
山崎さんの「マンション投資環境も厳しい」の「厳しい」の意味が分かりかねますが、このニュースからは、不動産市場が厳しいどころか、かなり盛り上がっている、むしろ過熱気味になってきた、と受け取れます。
利回りは不動産ごとに大きく異なる
もう1点、プロがやっても3%台後半だから、素人では儲からない(それ以下の収益しか上げられない)とは言い切れません。
不動産の利回りは、物件によってピンキリです。 今回のニュースの物件は4%を切る利回りですが、立地や築年、用途によって大きく幅があります。
他の金融資産と同じで、リスクが低い(=いい物件)ほど売買市場で付く利回りは低く、リスクが高い物件ほど利回りは高くなります。 実際に、このタイミングでも、ネットで収益物件を探せば、首都圏でもネット6%~8%とかの投資物件はごろごろ転がっていますし、地方にいけば10%以上の物件もたくさんあります。
※もちろん、利回りの高い物件は、運営次第では高収益が実現できる反面、空室発生や値下がりによって、当初の想定利回りが確保できないリスクも高い、ということになります。第一生命が購入するとされる4%未満という数字は、現状のマーケットでの一棟レジデンスとしては下限で、確かに低いのですが、総額も6棟で120億と、ゆくゆくは住居系のREITに売却もできるレベルの物件規模ですし、立地や築年等から安定的に運用できると判断したのでしょう。
個人が売買するその辺の木造アパートやワンルームマンションと、ニュースにある物件は、市場、当事者、物件の属性が全く異なるため、単純に比較対象にはできません。
不動産の利回りについて考える場合、
・利回りの変動要因には価格変動と収益変動の2つがあること
・同じ不動産でも利回りは物件の規模、用途によって水準が大きく違うこと
を認識しないと、話の方向がズレていってしまう恐れがあるように思います。