セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

リブセンス・村上太一さん講演(鎌倉投信 運用報告会)(その2)

鎌倉投信主催の、リブセンス・村上太一社長の講演会後半メモです。

前半記事はこちら。

後半は、運用責任者新井和宏さんの進行で、リブセンス各部門の社員の方もジョインしての対談とトークセッションでした。

村上さんは、投資を受ける前から、鎌倉投信の「いい会社をふやしましょう」という理念に注目していたそうです。
今では村上さん自身が、毎月「結い2101」を積み立てしている受益者です。

ベンチャーならではの「持たざる」強み

新井さんとのQ&Aの中では、ベンチャーとしての新サービス開発についての話が興味深かったです。村上さんの着眼点は「本質的な課題なのに、既存の企業が手を出しにくい分野」です。

求人広告の場合、企業側(広告主)にとっては、無料掲載できるのに越したことはありません。しかし、昔ながらの紙媒体で、長らく当たり前のように掲載料を取ってきた大企業の場合、媒体がネットに変わって、印刷代や輸送費が減っても、結局営業マンや代理店手数料など別のコストをかけてしまったりします。

その企業の組織や販売網など既存の資産がむしろ足かせ=負債になってしまい、「広告=掲載料を取る」という常識から抜け出せないケースです。
一方のリブセンスは、持っていないからこそ「掲載料ゼロ」というビジネスモデルを生みました。

鎌倉投信も、金融業界では後発組のベンチャーです。
鎌倉投信の場合は、運用業界で「既存の大企業がやらない(できない)領域」に着目しました。「相対的に低い手数料で、リスクを抑えた運用をやる直販の公募投信」です。
新井さんからは、業種が違ってもベンチャーのビジネスモデルの作り方は似ているというコメントがありました。

ただ、そういうリブセンスも今や400人の大所帯となり、ライバルから追われる立場、ビジネスモデルを真似される立場になっています。
だからこそ、「しずく」の視点でサービスを常に磨き上げていく必要があります。

社員さんとのトーク

リブセンスからは、IR部門、「転職会議」のカスタマーサポート部門、不動産サービス(IESHIL)の社員さんがトークに加わりました。

「いい会社の理念経営塾」でもそうですが、現場の人達のリアルな声を聴くと、その会社の本当の姿が何となく伝わってきます。

自社の社長や、受益者の前なので、もちろん100%全て本音ではない面もあるでしょう。ただ、今回は皆さん正直ベースで話している感じで、風通しはよさそうです。
社員からみた村上さんは、「いつもニコニコしていてこのまんま」というのは共通していました。もちろん、いざサービスや事業の議論になると、熱量はもの凄いそうです。

「よくあるガツガツ体育会系ではない」
「世の中をよくしていきたい人」
「利他」「真っ直ぐな人」
といった社員の社長評が、同時に社風を表していると思います。

所感

リブセンスの理念と社風がよく分かる講演でした。
業界事情も分かって参考になりました。

業績的には、採用増加、広宣費アップなどが響いて、2013年をピークに大幅減益傾向です。
質疑応答でも、新サービス「IESHIL」の収益性や、業績動向について厳しめの質問もでました。

新井さんからは、たとえ業績が上下しても、リブセンスが今のビジョンを持ち続け、考え方を共有している限り、寄り添っていくとコメントがありました。
一受益者として全く異論ありません。(自分が個別企業の業績に興味がなさすぎかもしれませんが、そもそも、リブセンスのここ2~3年の業績が悪いという話もほとんど知りませんでした。)

よく、組入企業の業績や株価がさえないと、「なんであんな会社を買っているのか」と言う人もいます。しかし、組入企業の経営方針や企業姿勢が変わってしまったのならともかく、業績の低迷だけを理由に、ファンドをけなすのは筋違いかなと思います。

アクティブファンドの場合、組入企業の経営や業績をウォッチして、中長期的な視点で株価の妥当性を判断するのは運用会社の仕事です。銘柄選択や売買タイミングはファンドマネージャーと運用会社を信頼しておまかせしているわけです。

受益者としては、運用会社が、その会社の理念や事業のどの部分を評価して投資したのか、を理解することがより大事だと思っています。