セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

鎌倉投信の第9回「結い2101」受益者総会(その1)

鎌倉投信の第9回目の受益者総会に参加しました。会場は横浜の大さん橋ホール。自分は第5回から参加しています。

今年のテーマは<「人」~ 世代をこえて想いを結ぐ(つなぐ)~>。

創業10年の節目を迎えた今年は、鎌倉投信の原点を振り返りつつ、今後のビジョンを共有する場でした。直前に、運用を担ってきた新井和宏さんの退社のニュースがあり、新井さんの言葉にも注目が集まりました。

例年同様、午前は投資先・取引先の企業展示、午後は運用報告と経営者の講演でした。投資先からはコタ、IKEUCHI ORGANIC、そして鎌倉投信の思想的バックボーンともいえる伊那食品工業の各経営者が登壇しました。

午後のプログラムを中心にログです。今年はPCを持ち込んでメモしました。3つに分ける予定です。(意訳も多いですがご了承ください)

<その1> ⇒ 本記事
・開会あいさつ(鎌倉投信・鎌田恭幸さん)
・結い2101 第9期 決算・運用報告
・基調講演(伊那食品工業 代表取締役副社長 塚越英弘さん)

<その2> ⇒ こちら
・”いい会社”の経営者講演(コタ 代表取締役社長 小田博英さん)
 パネルディスカッション

<その3> ⇒ こちら
・これからの挑戦(前 鎌倉投信 資産運用部長 新井和宏さん・IKEUCHI ORGANIC 会長 池内計司さん・社長 阿部哲也さん)
・これからの鎌倉投信(鎌田さん)

開会あいさつ(鎌倉投信・鎌田恭幸さん)

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創業10年を振り返って

・鎌倉投信も創業10年となる。ベンチャーのステージから次の10年に向けて組織をつくっていきたい。

・8年半前に3億円でスタートした結い2101。当初は赤字続きで、果たして会社を続けられるのか?という局面もあったが、受益者に支えられて純資産400億円が見えるところまできた。

・東日本大震災の時の多くの入金は、まさに平和への「祈り」ともいえるお金。お金は命そのものだと思っている。震災を通じて、自然体になれた。あせって無理な規模拡大を求めることなく、コツコツやっていこうという気持ちになれた。

金融の本来の役割は、持続的な社会に向けてお金を再分配していくこと。今回の総会も、「世代をこえて想いをつなぐ」がテーマになっている。

投資先企業の経営者、優れたリーダーたちから学んだこと

経営とは、会社にかかわるすべての人の幸福を探求すること

・すべてはたった一人の思いから始まる。運≒縁。純粋な動機で、常に学ぶ姿勢を持つ人、運がまわってくるまであきらめない人にチャンスがまわってくる。

・リーダーたちは自分の価値観をとことん掘り下げている。それは生まれてきた意味、役割、使命を知るプロセス

・リーダー=トップという意味ではない。目の前の人を幸せにできる人、変革を起こそうとしている人はすべてリーダー。

結い2101 第9期 決算・運用報告

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退社した新井さんに代わり、新マネージャーの鞘本剛さんのプレゼンは新鮮でした。とても分かりやすかったです。

第9期:2017/7/20~2018/7/19の数字です。

・純資産総額 286億円 → 372億円(+30%)
 ※9/21現在:約388億円

・口座開設者数 17,247人 → 19,034人(+10%)
 うち積立顧客 9,820人 → 10,771人(+10%)全体の57%

・基準価額 17,684円 → 19,368円(+9.5%)  
 同期間のTOPIXを上回っています。年初に日本株が下落する局面があり、リスクの低い結い2101の強みが発揮されました。分配はなし。

・株式比率 60.1% → 58.4%

・現在のリスク(基準価額変動率)は約8%前後で推移。中期リスク(250日)がファンドの目標リスク(年率10%)を下回っていれば株式比率を上げ、上回れば株式比率を下げるのが結いの運用の原則。

・今はリスク10%を下回っているので、本来なら株式比率を上げる局面。ただし、基準価額(時価)が簿価ベース基準価額を20%以上オーバーシュートしている現在のような状況では、相場変動時の急落に備えて株式比率を上げないルールを適用。したがって株式比率はほぼ横ばい。

→ このリスク管理手法は数年前から取り入れています。さらに、より積極的な急落ヘッジ手法として、先物の売りやオプションも以前から検討していますが、そこはまだ導入しておらず引き続き検討しているとのこと。

・リーマンショックや東日本大震災など、過去の大きな相場変動と同程度の下落を想定した場合のドローダウンを毎月モニタリングしている。
例)リーマンショック時(リーマンブラザーズ倒産後1か月)のストレステスト
 TOPIX:▲18.34%  結い2101:▲12.34%

→ 結い2101はおよそ4割キャッシュを持つので、概ね市場平均の3分の2ぐらいの下落にとどまるのではと思います。

投資先企業数 64社
 前期は3社に新規投資、全売却はなし。
 新規投資先:ホープ、MS&Consulting、萩原工業
 投資割合(等金額ベース)のターゲットは約1.2%(4.5億円)

今年も、結い2101の変わらない運用を確認できました。

基調講演(伊那食品工業 代表取締役副社長 塚越英弘さん)

「いい会社をつくりましょう」を社是とし、トヨタの豊田章男さんはじめ多くの経営者も訪れる伊那食品工業。「かんてんパパ」ブランド中心に、寒天のシェア約8割を誇り、社員のしあわせを第一に掲げながら半世紀にわたり増収増益を続けています。

鎌倉投信の理念「いい会社をふやしましょう」は、塚原さんの父親、塚越寛会長のイズムがベースとなっています。投資先ではありませんが、鎌倉投信とは切ってもきれない「いい会社」です。

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まず、塚越会長の理念「年輪経営」を紹介した映像を拝見しました。
その中の塚越会長の言葉。

- 経営の目的は「人を幸せにすること」
経理上は「人件費」だが社員はコストではない。社員の幸せが目的、利益は手段なのに、今の経営は、手段と目的が逆転して利益が目的になってしまっている。

- 木が年輪を重ねるように、毎年少しずつでも永続的に成長していくのが「年輪経営」。社員を犠牲にした無理な成長は決して求めない。

- 売上は大事だが、売上が伸びることだけが成長ではない。社員の人としての成長、いろいろな成長がある。

「年輪」自然に学ぶ/経営理念/伊那食品工業株式会社

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伊那食品では、3万坪もの本社敷地(かんてんパパガーデン)を社員さんが毎朝自主的に清掃しています。有名な活動です。

・朝掃除は会社が強制したわけではなく、ルールや当番もないが、毎朝、土日もだれかが必ず掃除をしている。敷地の管理はすべて自前。

・「なぜ伊那食品の社員はすすんで朝掃除をするのか」と聞かれる。それは、社員が朝掃除の「目的」を分かっているから。「目的」を理解して活動していることがとても大切。

・朝掃除の一番の目的は「気づきの訓練」。毎朝掃除していると、日々移り変わる四季や、ちょっとした変化を自然に実感できる。「気づき」は成長。だから、朝掃除は他人のためではなく、自分のため、ということをみんな理解している。

・朝礼後の3分間スピーチもあるが、人前で話せるようになることは自分のため。自分で考えて、自分のためにやる行動は楽しいし成長につながる。

・当社では「顧客満足」「お客様のため」という言葉はあまり出てこない。お客様はもちろん大切だが、社員が気持ちよく働き、幸せになれば、必然的にお客様も喜ばせることができる。だから、社員ひとりひとりが他人のため、ではなく、自分で考えて、自分のために自主的に行動できる。

・会長の言う通り、売上や利益は「結果」にすぎない。伊那食品では「利益はウンチである」という例えがある。企業の活動の結果、最後に残ったものが利益。利益は結果にすぎないのだから、前もってどれぐらい出そう、と目標を立てるものではそもそもない。だから、利益目標は立てないし作ったことがない。

・結果的に利益が毎年ちゃんと出るような健康な体(会社)になることが会社の本来の目的。数値目標を立てると、どうしても数字が独り歩きして目的化してしまう。もちろん結果としての数字は大事だが、営業会議で数字の話は一切出ない。会議ではこれからのこと、将来の話をする。

・伊那食品では毎年必ず社員全員の給料を増やしている。人事評価もなく基本年功序列。社員はみんな伊那食品ファミリーという考え方。家族内で人事評価や成果主義がないのは当たり前。みんなで頑張って得た成果をみんなで平等に分け合えばいい。
研修プログラム的なものもない。日々の仕事の中で先輩が後輩に教えていく。みんなが「自然なかたち」で働けることが大事。

・人を大切にしながら経営が成り立つことを示すのが先代の野心だった。これから会社が大きくなっても、今の経営を貫き、次の世代に引き継いでいく。

社員の幸せを追求する経営が、ひとりひとりの自主性や創造性を引き出し、結果として会社も成長する、それがまた社員に還元される、という循環ができていると感じました。

ひとりの社員さんが映像の中で、「会社が自分たちに本当によくしてくれるから、恩返しするつもりです」とさらっとコメントしていたのにちょっと感動しました。

次のパートはこちらです。
⇒ 鎌倉投信の第9回「結い2101」受益者総会(その2)

 

(関連記事)昨年の総会記事です。