日経ヴェリタス1/8号は「ESG投資の号砲」と題して、動き出した日本のESG投資市場についての特集でした。
その中で、ESGを投資に取り入れている個人投資家として紹介して頂きました。
朝日ライフアセットマネジメントの「朝日ライフ SRI社会貢献ファンド(あすのはね)」を積立てているというブログ記事を目に留めて頂き、取材を受けました。
「あすのはね」のほか、ESGファンドではありませんが、投資のサステナビリティや社会性に関心が向くきっかけとなった、鎌倉投信(結い2101)のことも載っています。
記事全体は、機関投資家の動きが中心です。
2006年の国連のPRI(責任投資原則)をきっかけに欧米の機関投資家にESGが広がりました。日本でも2015年に最大の投資家であるGPIFがPRIに署名、ESG運用に本格的に乗り出すことになり、国内でもESGが加速することとなりました。
各運用会社のESGインテグレーションの取り組みや、企業側の統合報告やサステナビリティへの対応、MSCIなどのESG格付やインデックス作成の動き、さらにESGとリターン/リスクの関係など、最近のESGの動きが詳しくまとまっていて、勉強になります。
個人で投資可能なESGを取り入れた公募投信も、「あすのはね」のほかいくつか紹介されています。
以前、JSIFのセミナーで運用会社の話を聞きました。運用現場では、企業分析から銘柄組入、投資後のエンゲージメントまで、ESGを運用プロセスに取り入れることが当たり前になりつつあります。
「日本サステナブル投資白書2015」発刊記念シンポジウム(その1)
こうやってESGの認知度が上がっていった場合、ESG的にいい会社の株価が上がり、結果としてリターンも上がるというよい循環も期待できますが、逆に、なんちゃってESGファンドが増えたり、「ESG銘柄で儲ける!」というズレた売り文句が出てくる心配もあります。
この点は以前、今回の特集にもコメントしている水口先生のセミナーを聞いた際に書きました。
(過去記事)
ESG投資か、責任投資か?<高崎経済大学 水口剛さん・日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)セミナー> - セルフ・リライアンスという生き方
その点、今回のヴェリタスは、最後に<「きれいごと」でもお金は動く>という編集委員・小平龍四郎さんのコラムでESGの本質をしっかりまとめてくれていました。
抜粋引用します。
『株主と社会の利益の均衡点を探る試みがESGの本質と言えるかもしれない。(中略)企業がステークホルダーの正当な利益を尊重し、長期的に社会的価値を最大化することにより、結果として株主価値も最大化するという考えだ。(中略)「きれいごと」にもお金を動かす力は秘められている。』
小平さんが、鎌倉投信の新井さんの著書『投資は「きれいごと」で成功する』にかけて「きれいごと」を使ったのか分かりませんが、お金の使い方にしがらみのない個人こそ、「きれいごと」投資を実践できる立場にあります。
ESGを突き詰めると、利益は目的なのか結果なのか、という問いにつながります。
株主だけが目先儲かっても、会社が長く続かなければ意味がありません。ESGをきっかけとして、株主利益偏重ではなく、社会全体を豊かにする企業活動にお金を託し、そこから結果としての長期的な果実を受け取るという考え方が個人にもっと広まればと思っています。
日経ヴェリタス 2017年1月8日〜1月14日号 ESG投資の号砲 動き出す巨鯨マネー、市場を変える