ESG(環境・社会・ガバナンス)が広まっています。
投資の世界でも、経営の世界でも、非営利の人たちからも「ESG」という言葉が聞かれるこの頃です。
一方で、ESGって何?という問いに対する明確な答えはなかなか見つかりません。
そんな問いに分かりやすく答えてくれる本を見つけました。
「社会を変える投資 ESG入門」です。
(目次)
第1章 ESGで何が変わるのか
第2章 ESGとは何か
第3章 これからの「良い会社」
第4章 投資で社会を良くする
第5章 ESGの未来
- ESGとは何か。なぜ生まれたのか。
- ESGをどう経営に取り入れるか。
- ESG投資の具体的な方法は。
これらを分かりやすく解説しています。
分かりやすさの理由の一つが、運用会社(アムンディ・ジャパン)の編著ということ。実際にESGの視点で企業を選び、投資し、対話している人たちが書いているので、概念的ではなく、具体的でイメージがつかみやすいです。また、EやGに偏ることなくバランスもいいですね。
特に大事なのは第3章の『これからの「良い会社」』。
企業は、6つの資本を活用し循環させながら価値を創造しています。
6つの資本とは、「財務資本」、「製造資本」、「知的資本」、「人的資本」、「社会・関係資本」、そして「自然資本」です。
株主や債権者に還元される「財務資本」だけでなく、6つの資本全てをバランスよく育てられる会社が、ESGの評価の高い会社であり、そういった会社を評価して投資するのがESG投資です。
つまり、利益最大化・株主偏重ではなく、従業員、取引先、地域住民、そして自然環境まで含めた幅広いステークホルダーに還元される社会全体の価値を、長期的な視点でバランスよく高めていくことが、ESGの考え方の基本です。なぜなら、これらのどれか一つでも犠牲になったら、短期的には儲かることはあっても、会社は持続的・長期的には成長できないからです。
このような考え方が広まっているのは、成長鈍化と格差拡大、気候変動の深刻化という世界の構造変化が背景にあります。道徳や倫理ではなく、企業が永続し、投資リターンを上げるためにもESGを考慮することが必要とみんなが思い始めています。
また、具体的にESGに取り組む上で、企業、投資家双方がどう変わらなければいけないかについても、統合報告書やエンゲージメントの点から詳しく書かれています。
投資家と企業が対立するのではなく、持続的に企業価値を高めていくという同じ目標に向かって協働するには、投資の世界で上場企業を「銘柄」と表現するように会社を投機商品のように扱ってきた文化も変える必要があります。私も「銘柄」という言い方が非常に苦手で、できるだけ使わないようにしています。
短期の売買で儲けるファスト・インベストメントから、株式を長く保有し、企業に稼いでもらうスロー・インベストメントに転換する必要があるとの意見には全く同感でした。
今まで読んだESG関連書籍の中では内容のバランス、分かりやすさともに一番でした。
2019年6月現在、最初に読むESG本だと思います。