セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

元本の変動する投資信託やETFに「複利効果」は当てはまるのか

長期投資や積立投資の大きなメリットとして、「複利効果」があると一般的に言われます。

よく出てくるのは、次のようなグラフです。 元本100万円、利息5%として30年運用すると、税金などを考慮せずに単純化すれば、複利計算では432万円、単利計算では250万円となります。(複利がピンクの線、単利がブルーの線です)

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複利計算では、ある期間の利子が、次の期間の元本に組み入れられ、さらに利子を生み出すので、期間が長くなればなるほど利子の金額が雪だるま式に増えていくことになります。

しかし、複利は本来、元本が変動せず、利率も一定であることを前提とした預金や借金の返済などに使われる考え方です。

投資信託やETFは、基本的に元本価格の変動する株式や債券などの資産に投資をしています。元本(100万円)の価格は常に変動しますし、利子(5%=5万円)も確定しているわけではありません。

上記のきれいなグラフのように資産が毎年一定率で増えていくことはあり得ませんし、増えていくとしてもかなりランダムなジグザクの線を描いていくでしょう。そもそも最初の元本100万円を下回ることもあります。

ということで、このような元本や収益(配当や債券の利子)の変動する商品に投資する場合に、「複利」という考え方を当てはめていいものか、ずっと疑問に思っていました。

先日、Facebookの「コツコツ投資家がコツコツ集まるファンページ」で紹介されていた、ユニオン投信の10月10日付の月次レポート(pdf)にある田子社長のコラムが、この点を解説してくれていました。

(中略)ファンドのように値動きがある商品、しかも元本が割れるリスクを伴う商品では(複利)計算は成り立たず、よって「複利の効果」は存在しないのでは?ということです。 確かに価格変動を伴うファンドにおきまして「年率○○%で運用します」と断言することは不可能です。

しかし、(分配金再投資による)保有口数や(ファンド内での利益の再投資により)ファンド資産の増加があれば、ある時点での基準価額を用いて“設定来からの複利年率”を算出することは可能となります。

そして、算出された“実現利回り”を使って20年後、30年後に達成されるであろう予測を「複利の効果」として皆様にお示しすることは可能だと考えます。

(中略)以上により“ファンドにおける「複利の効果」”のまとめとして: 「分配金」は再投資することで“保有口数”を増やし、投資(売買)による「売買益」(配当金含む)は投資元本に組み込まれ、その都度新たな投資元本として再投資すること。これを実践することにより、結果的に“複利運用と同等の効果が得られる”可能性がある。」

すなわち、「再投資のメリット」≒「複利の効果」という定義が近いのではないでしょうか。

まとめると、

値動きのある投資信託やETFなどの商品においては、厳密には複利は当てはまらない。

・しかし、分配金の再投資による口数の増加、またはファンド内での再投資による基準価額の上昇で、長期的には複利で運用したのと同じような効果が得られるかもしれない。

株や債券などリスク資産への投資を中心とする長期投資を行う場合に、ついつい「今年はどのくらい増えた」と気にしてしまいがちですが、大幅に増えたり減ったりするリスクがある以上、あまり1年単位のリターンを考えても意味がありません。(今年は+5%でも来年は△20%かもしれない)

20年後、30年後に振り返ってみて、複利で○%で運用したのと大体同じ成果だった、と結果的に認識できるのだと思います。 「複利効果」というのであれば、やはりこのぐらいの長期で考えることが必要だな、と改めて思いました。