セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

士業はグローバル化の中で生き残れるか(「10年後に食える仕事、食えない仕事」)

「10年後に食える仕事、食えない仕事」という渡邉正裕さんの本を読みました。

グローバル化が急速に進む中で、将来生き残っていける職種を分析、解説しているキャリア本なのですが、その中で、士業についても取り上げられています。

渡邉さんによると、日本は人口減少傾向にあるものの、今後30年以上は1億人という十分大きな国内市場を維持し続けます。今後、アジアや新興国から安くて優秀な労働力が流入してくるとしても、外国人よりも優位な地位に立てれば、無理に外国に出て行かなくても、日本国内で十分仕事をしていくことができる、と書かれています。

日本語を話し、日本で教育を受けた日本人が外国人よりも絶対的に有利に立てる(=日本人メリットがある)職種の一つとして、社会保険労務士などの資格(士業)が挙げられています。

士業は、グローバルな競争に巻き込まれにくい、次のような特徴があります。

1.制度や法律が国により様々なので外国人が参入しにくい

例えば、社労士が扱う社会保険や年金の制度は国によってバラバラです。税金もそうです。 不動産でいえば、日本では土地と建物は別々とされていますが、海外では法律上一体とされている国もたくさんあります。 民法、商法といった基本的な法律や、慣習も全く違うため、日本で育った日本人に強みがあります。

2.高度な日本語能力が必要

士業の業務は、法律に基づく専門的な手続きや、書類の作成に関わります。弁護士、税理士、社労士、行政書士、司法書士などはみんなそうです。 かなりのハイレベルな日本語能力が要求されるため、外国人が入り込みにくい分野だといえます。 (日本語は、言語学的にも欧米系の言葉と違って、かなり特殊な言語だと言われます。わざわざ日本に参入する手間を考えれば、英語が通じる国に参入する方がよっぽど楽です。)

3.信用に基づくコミュニケーションが必要

どんな士業も、顧客との深いコミュニケーションと、それに基づく人的な信用で成り立っています。 島国で生まれ育った日本人は、欧米などと比べれば、外国人と関わる機会が少ないと言われています。 逆に考えると、日本国内で日本人を相手に、専門的なサービスを提供する場合には、日本人であることそのものが強みになります。

以上の1.~3.から、知的専門職としての士業は、簡単には外国人に取って替わられない、グローバル化への耐性が強い職業の一つといえるのです。 渡邉さんは、この本の中で、具体的な資格として、弁護士、税理士、社労士、不動産鑑定士、建築士などを挙げています。

ただし、だからといって、「試験に受かってしまえば何もしなくても10年後も食える」という意味ではありません。グローバル化の中で、他のいろいろな職種と比べれば、相対的には食いっぱぐれしにくい、ということです。国内市場は人口の減少ととともに緩やかに縮小していきますし、競合する資格者の数はどんどん増えていきます。外国人との競争以前に、国内での競争に生き残ることが大前提です。

さらに、TPPなど、グローバルなサービス貿易の自由化の波によって、士業など専門サービス業の分野でも、外国人が参入しやすくなるような法律や制度の変更がなされるかもしれません。 今まで以上に、営業努力と専門特化、自己研鑽が必要となるのは言うまでもありません。