セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

レオス・キャピタルワークス 藤野英人さん × ニッセイアセットマネジメント 伊藤琢さん(げんせん投信) ファンドマネージャー師弟対談&ブロガー座談会

SBI証券の企画で、ひふみ投信を運用するレオスの藤野英人さんと、かつてレオスに在籍して藤野さんのもとで運用を学び、ニッセイアセットマネジメントで「げんせん投信」を立ち上げた伊藤琢さんの対談に参加しました。

げんせん投信は予備知識がほとんどなかったのですが、ウォッチしたいファンドの一つになりました。

伊藤琢さんと藤野英人さんのつながり

「げんせん投信」を手がける伊藤さんは、あのバークリー音楽院に留学しギタリストを志した経験を持つ異色のファンドマネージャーです。(何と上原ひろみさんと同期だったそう。) 

大学時代にたまたま藤野さんの講義を聞いたのが藤野さんとの出会い。バークリーに合格し、渡米する時も藤野さんが背中を押したりとメンター的な存在だったようです。

その後、日本に帰国した際、藤野さんがレオスを創業すると聞いて、お茶くみでも何でもします!と入社してしまいました。とても不思議な関係ですが、伊藤さんにとって藤野さんとの出会いは運命的なものだったのでしょう。

この記事に出てくる伊藤さんの「恩師」が藤野さんです。

げんせん部員で美しいハーモニーを奏でる|日本株の投資信託「げんせん投信」

レオスに入社後、藤野さんからは、業績や数字ではなくとことん「人を見る」ことを学んだといいます。

ある時、伊藤さんがお茶を出したお客が、伊藤さんを無視してふんぞり返っていた、と報告したら、藤野さんから「とても大事なことに気づいた。君は投資家として初めて仕事をした。」と言われたことがあったそうです。経営者のちょっとした態度や振る舞いに、会社の本質や実体が現れます。藤野さんが大事にしている「人を見る」ことを象徴するエピソードです。

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投信業界の巨大な「穴」を埋める同志でありライバル

伊藤さんから見た、ひふみ投信成長の理由は、パフォーマンスはもちろんですが、徹底的に「消費者目線」の投信であることです。レオスのように、当たり前のことをきちんとやっていない投信会社が多すぎる、という意見には同意です。

関連して、藤野さんより、ひふみ投信のミッションについて印象的なコメントがありました。
そもそも起業するとは、穴を見つけ、穴を埋めようとすること。企業に相対する時も、経営者がどういう穴に気づき、埋めようとしているのかを見ていると言います。(「穴」=みんなが気づいていない「課題」と捉えられると思います)

一方、日本の投信業界には巨大な穴が開いていて、その穴を埋めるのがひふみ投信の役割です。具体的には、「消費者不在」という穴であり、商品としての「ブランド不在」という穴です。

かつての日本の投信は、販売会社主導のもと、金融商品としての機能、パフォーマンスを売っているだけで、思いや愛着がこもった商品(ブランド)が育っていませんでした。ここに、消費者目線を取り入れ、投資信託に対する新たなブランドロイヤリティを生み出したのが、さわかみに始まる直販の流れだと思います。

伊藤さんと藤野さんは、ライバルであるとともに、この大きな穴を埋めていくための同志でもあります。伊藤さんがげんせん投信を立ち上げる際、藤野さんはレオスのノウハウを余すところなく提供したそうです。このあたりの藤野さんの大局的な視座は凄いと思いました。

げんせん投信の運用理念や運用プロセスには、伊藤さんのレオスでの経験が活かされています。
キーワードである「見えない資産」や「GENSENスコア」は、レオスが実践しているRSM(非財務情報を数値化するレオス独自のスコアリングモデル)と軌を一にしています。
※そう言えば、コモンズ30ファンドも「見えない価値」を持続的な成長力の源泉として企業を見るポイントにしていますね。

ただ、アクティブファンドは全く同じ運用というのは有り得ません。藤野さんの言う通り、伊藤さんは藤野さんのコピーではないし、伊藤さんには伊藤さんの運用があります。「同じ曲でもプレイヤーが違えば違う作品になる」と藤野さんが例えていました。
例えばクラシックは、指揮者、オケが違えば同じスコアでもまるっきり違う曲になります。この違いが「人」の要素が大きいアクティブファンドの面白いところです。

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「大手」っぽくないアクティブファンド「げんせん投信」

後半は、参加ブロガーとの質疑応答でした。ざっくばらんに答えて頂きました。

ニッセイアセット、というと「大手」「系列」と思いがちですが、巨大販売会社を親会社にもつ証券・銀行系の運用会社と比べると、親会社の影響度はさほど強くはなく、自由度、独立性が結構高いという点は気づきでした。

げんせん投信のWebサイトを見ても、まさに「消費者目線」を意識していて、いわゆる大手っぽくはないです。げんせんの運用チームはニッセイAM内の社内ベンチャー的な位置づけで、クレドで理念を共有しているそうです。もちろん、アナリストだけで20名という人的リソースは大手の強みです。

自分は、関心のあるESG評価について質問しました。ニッセイアセットの場合、各セクターアナリストがESGもカバーしています。極端にESGスコアが低い銘柄は除外されます。投資対象企業のESGスコアは全て平均よりは高めとのことでした。

げんせん投信は、じっくりゆっくり、真のファンとなる投資家を増やしていく方針で、このあたりも受益者との関係性を大事にする独立系に近いです。当面ネット証券での販売のみで、大手証券でドカっと売るようなことはしません。

げんせん投信の運用内容については、企業の見えない資産を競争力の「源泉」ととらえた、40~50銘柄への「厳選」投資という大枠のみしかまだ知りませんが、またいいアクティブファンドが出てきたという印象です。
フォローしたいと思います。

未来が、楽しくなってきた!日本株の投資信託「げんせん投信」

(2018/3/17 追記)
SBI証券のサイトに、本対談の模様が2回にわたりアップされました。お二人のコメント、われわれブロガーとの質疑応答も詳しく載っていますので、ぜひご覧ください。

SBI証券 - 独占企画!スペシャル対談

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