セルフ・リライアンスという生き方

自分も社会も豊かにできるお金の使い方について。日々の投資や寄付の記録を綴ります。

「資格を取ると貧乏になります」(佐藤留美 著)

なかなか衝撃的なタイトルの資格本です。

資格や士業の厳しい現状について書いた本や記事が増えています。 ただ、過去いろんな資格を取得して、不動産鑑定士として開業した立場から言うと、単なる推測や2次情報を含むものや、マイナス面を過度に誇張したものが少なくないようです。

そんな中で、本書は、多くの資格者や事務所経営者への直接取材によって得た生の声から構成されているので、「資格はもうダメだというけど、本当のところはどうなの?」というリアルな実状がよく分かります。

著者の佐藤留美さんは、キャリア、労働、働く女性などの分野で本も出されているライターです。

取り上げているのは、弁護士、公認会計士、税理士、社労士の4資格と、TOEICです。

弁護士、会計士は、文系資格の最高峰に君臨していながら、ここ10年ぐらいの間に国の方針で資格者が倍増したために異常な就職難となったことを、資格業界の象徴的な現象として最初に詳しく書いています。
(弁護士:2001年1.8万人 → 3.4万人) (会計士:2000年1.6万人 → 3.2万人)

事件数減少で弁護士の仕事自体が減っていて、最近は、国選弁護人の抽選に並ぶベテラン弁護士もいるそうですが、その報酬が「1件6~7万円」と安いのには驚きました。

税理士の顧問報酬の下落や、会計士の税務業務参入によるパイの奪い合い、社労士の独占業務の幅の狭さなどは、昔から言われ続けてきたことです。 税理士の従来業務(記帳代行&決算代行)が、ネットやクラウド会計の普及で、構造的には縮小の一途をたどる可能性がある点にも触れています。

各資格についての取材内容やデータは、それ自体とても参考になるのですが、私が感じた、著者が最も言いたいポイントをあとがきから引用します。

『元々、弁護士、会計士、税理士、社会保険労務士などの本来の仕事は、他人の面倒な問題を代理して引き受ける「社会貢献的」なものである。「資格さえ取れればみんなが尊敬してくれてお金もガッポガッポ」という思い込みの方が、そもそもおかしかったのである。』

これは、本書に出てこない司法書士、行政書士などの資格にもそのまま当てはまります。

「独立してガンガン稼ぐぞ!」は資格取得の動機として素晴らしいし重要です。しかし、本書でも触れていますが、実際に仕事に恵まれているのは、損得勘定抜きに「他人や社会の役に立つ」強い気持ちで取り組んでいる資格者です。

全体的に読みやすい本ですが、タイトルにある、「資格を取る」=「貧乏」は言い過ぎの印象があります。人口や企業の減少や資格者増加で、弁護士、会計士、税理士などどの士業でも、長期的に一人当たりの仕事量や報酬が減っていくのは間違いないでしょう。

一方で、現在弁護士や会計士があふれているのは、政府が急激に合格者を増やしたのと、リーマンショックによる急激な市場の落ち込みが重なってしまったせいもあります。

実際に、最近では、これらの反動で、弁護士の合格者数を減らすとか、監査法人が採用を増やすといった動きも出ています。 難関資格を取っても損するだけで絶望的、ということは決してなく、これから資格を目指す人は確固たる信念と、資格取得後の努力が必要ですよ、ということではないでしょうか。 ちなみに自分も一応、中小企業診断士を取ってから約15年、不動産鑑定士を取ってから約10年経ちますが、ビンボーにはなっておりません(笑) 新書で手軽に読めます。