セルフ・リライアンスという生き方

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会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方 [実践編]【読了】

楽しみながら、企業の決算書を深く読めるようになると評判の本、「世界一楽しい決算書の読み方」。第2弾の「実践編」を買いました。著者は大手町のランダムウォーカー氏。

第1弾の前作は、いわゆる財務三表(B/S、P/L、キャッシュ・フロー計算書)の読み方そのものが中心でした。

今回の「実践編」は、前作をベースとしながら、決算書の「比較」を中心に、ビジネスモデルや戦略、他社との違いをさらにもう一段深く理解できるようになるためのノウハウが詰まっています。

決算書の「比較」のしかたが分かる

決算書分析においては必ず2つ以上の数字を使って比較する必要があります。(p62)

本書では、企業分析のために必要な2つの「比較」が出てきます。
一つの企業を時系列で比較する「時系列分析」と、競合他社と比較する「競合比較分析」です。

時系列分析では、任天堂、東武鉄道、ワタミなどを例に、数字の変化の背後にある経営判断やビジネスモデルの変化を読み解きます。「転換点」と「異常値」を見つけるのがポイントです。

競合比較分析では、セリア とキャンドゥなどを例に、同業種間での数字の違いに着目し、より深掘りして分析する方法を学びます。「共通点」と「相違点」を整理するのがポイントです。

情報の取り方が自然と身に付く

時系列分析や競合比較によって、「どうしてこんな数字になるんだろう」という違和感に気づいたら、何となくスルーせずに深掘りするのが大事です。

定量情報で違和感を覚えたら、定性情報で何が起こったのかを調べにくという思考が大切だよ。(p118)

本書では、有報や決算説明資料、中計、Webや適時開示など、どんな情報をどこに取りに行けばいいのかのヒントがたくさんあり、定量→定性分析のコツがつかめます。

また、全社データをミクロにブレークダウンして、具体的なイメージを持つための方法も解説されています。これも大事と思いました。(ex サイゼリヤの売上高を、1日1店舗あたり売上高、1店舗あたり1日来店客数まで落とし込む)

 

事例中心の構成なのが本書の売りですが、私が特に面白かったのは、エーザイとサイバーエージェントの事例でした。経営者がどれだけ長期視点で動いているのか、強い会社が環境変化の中でどのように強さを保っているのかが分かります。一方で、長期にわたり成長し続けることが簡単ではないことも実感できました。

あえて注文を付けるとすれば、身近ということで小売や飲食、ゲームなどの業種の事例が多いのですが、製造業の事例ももう少しあるとよかったと思います。

決算書を読み解き、企業とビジネスを深く理解する楽しさを教えてくれる、とても完成度の高い本です。簿記や会計の知識が全くないという方は、前作とセットで読むのをおススメします。