セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

【書評】「外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社」(鎌田 恭幸著)

鎌倉投信の代表、鎌田恭幸さんの2011年の著書です。

鎌倉投信の理念がつまった、「結い2101」受益者にとってのバイブルです。
「結い2101」の積立を初めてもうすぐ2年ですが、恥ずかしながら初めてちゃんと読みました。

本書で述べていることは大きく2つです。

鎌倉投信が考える「いい会社」とはどんな会社か

なぜ、「いい会社」に継続的に投資することが豊かな社会をつくり、同時に個人の長期的な資産形成につながるのか

この本が書かれた3年半前と比べると、結い2101の組入企業は29社から50社に増加し、純資産総額も大きく増えています。
しかし、鎌倉投信の投資哲学は当時と全く変わっていません。

「いい会社」に投資する意味

鎌倉投信の理念が集約された一文を引用します。

『鎌倉投信は、社会的利益をもたらさない会社は存続しないし、そうした会社への投資なくして長期的な資産形成はないと確信しています。』(p32より)

鎌倉投信の考える「いい会社」とは、上の文章で言えば「社会的利益をもたらす会社」であり、具体的には、次の2つの要素をあわせもちます。

本業そのもので社会的課題を解決しようとしている会社

株主偏重ではなく、従業員、顧客、地域社会、環境など全てのステークホルダー、特に「人」を大切にする会社

このような「いい会社」は、社会に必要とされ続けるので、長期的に成長します。
株価が安くなったときにはたくさん投資し、保有し続けることによって、受益者にリターンがもたらされると同時に、会社を取り巻く人々や社会全体が豊かになるという好循環が生まれます。

さらに、この好循環は、東日本大震災直後の暴落時に、顧客からの多くの資金流入があったことからも分かるように、運用会社だけでなく、理念を共有する受益者(=投資家)にも支えられているのがポイントです。
こんなことも書かれています。

『どう投資先を選定して、どのように運用するかも重要ですが、どういった性質の投資家と共に歩むかが何よりも大切です。』(p24より)
もっと早く読みたかった

自分が最初に鎌倉投信を知ったのは、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」で、既に結い2101に投資している受益者さんからの口コミです。

その後、運用責任者新井さんの話を聴いたり、鎌田さんに実際にお会いしたりして、積立を開始するに至ったのですが、実際に投資するまでには結構時間がかかりました。
それは、「いい会社」という言葉を「社会貢献に力を入れている会社?」程度の誤ったイメージでとらえていて、本質的な部分を理解していなかったからです。

もし、この本を最初に読んでいれば、もっと早く投資を始めていただろうなと思います。

実際に投資するかは別にして、「いい会社に投資するって何なの?」とどちらかといえば疑念を持っている、以前の自分のような人にこそおススメしたいです。

また、最近受益者になった人、「結い2101」への投資を検討中の人にとっても、代表的な投資先企業の事業内容や、鎌倉投信の投資先の選定基準が詳しく説明されているので、役立つでしょう。

結い2101が時価総額(企業規模)比ではなく、等金額ポートフォリオを組んでいる理由や、いわゆるSRI(社会的責任投資)と、結い2101との違いについても理解できました。

「企業と社会性」というテーマ

本書とも関連しますが、最近は、社会貢献と経済的利益の両立や、社会的利益と経済的リターンとの関わりといったテーマに個人的に関心を持っています。

まだ勉強不足ですが、CSV(共有価値創造)や、古くは渋沢栄一の「道徳経済合一説」なども、広い意味では同じベクトルの考え方だと思います。

このような共通思考が、先進国の経済の停滞や、環境意識の高まりなどを背景に、経営や投資の世界にも少しずつ広まりつつあるようです。

ただし、実際にはうわべだけの取り組みも多く、投資家としてはよく見極めないといけません。
その点、鎌倉投信に対しては、本当の「いい会社」選びを信頼して任せられることが、この本で分かると思います。