よくお世話になっているマネーの会の企画で、ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好さんのセミナーに行ってきました。
【マネーの会】経済・市場の素朴な疑問を考えよう~
==== 馬渕さんは、元日興コーディアル証券国際市場分析部長で、現在は独立して株式、為替、債券などのマーケット分析と講演、セミナーなどをされています。メディア出演も多い方です。
前半は、資産運用の基本的な心構えと相場への向き合い方について、後半は具体的な最近の相場動向と見通しについてでした。
前半は、分散投資の必要性や、客観的な運用のルールの大切さ(ドルコスト平均法もその一つ)、コアサテライトなど、誰が聞いてもおそらくうなずける、けれども大切な内容でした。
個人的には後半のパートが特に参考になりました。
自分が気になった部分のメモなので断片的です。
・購買力平価からみると一旦円高に振れてもおかしくない
変動相場制に移行した1973年以降のドル円レートと、企業物価指数ベースの購買力平価を比較すると、購買力平価より20%以上上振れしたのは過去2回のみ(現在が3回目)。
2015年1月時点の購買力平価:1ドル99.53円、20%円安水準:119.43円
・金利差から見ても今は「円売られすぎ」
日米10年債の金利差とドル円レートを比較すると、2006~2009年途中頃までのドル円は金利差でほぼ説明が付く。その後、2012年までは「円買われすぎ」(1ドル70円台まで行き過ぎた円高)、逆に最近は金利差を大きく超えて「円売られすぎ」。
2015年2月26日の金利差から見た理論値:1ドル97.62円
以上から、今年の中盤に一旦大きく円高にふれる(~105円?)可能性があるとのこと。
ただし、その後は年末にかけて120円、125円という水準に戻っていくと見ているようです。
・安倍政権でなくても株高や円安にはなっていた
民主党政権下の2012年前後、TOPIXはPBR1倍割れしていた。為替も購買力平価からはマイナス20%水準の行き過ぎた円高だった。
→ アベノミクスどうこうではなく、放っておいてもある程度の株高、円安になった可能性が高い。(異常値から正常に戻っただけ)
現在の日銀の金融政策、量的緩和によるインフレ期待政策の効果にはかなり懐疑的なお立場のようでした。(素人ですが私も同意見です)
実際に、「M2÷マネタリーベース」比率の推移を見ると、日本もアメリカもまったく伸びていないどころか下落していて、政策目的である「カネ余り」の上京にはほど遠い、とのデータも示されました。(ここ最近ではようやく民間融資が増え始めてはいます)
・アメリカの景気は底堅い
世界の景気を左右するアメリカの経済は、最近の雇用者数、総賃金の伸びを見る限り底堅いとみているとのこと。
今年中盤にも利上げが想定されますが、金利を上げる=景気がよいからであって、それでアメリカの株価が大崩れすることはないのでは、との予測でした。
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(3/9 追記)
馬渕さんご本人より本記事に補足のコメントを頂きました。
FRB利上げ後の、米長期金利の動向、それをきっかけとした米株、為替の動きに要注意とのことです。
下記コメントも合わせてご覧ください。
ありがとうございます!
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よどみなく言葉が出てくる情報量の多さと、データも用いた分かりやすい解説はさすが、でした。
2時間では盛りだくさんすぎだったので、もう少し絞るか回を分けてもよかったと思います。
個人的には、「今年半ばから相場は大崩れするでしょう」と言ってもらいたかったですが、そこは人それぞれということで。
相場予測はしょせん未来のことなので、どんな専門家でも当たることもあれば外れることもあります。
100%誰かの意見をうのみにするのではなく、いろいろな人の意見も聞きつつ最終的には自分で決めないといけません。
ただ、当たるか外れるかではなく、信頼感を持てるかという点では、データと事実の重視、取材による現場主義、分析の一貫性、を大事にされる馬渕さんのような専門家は、信頼できるのではないでしょうか。
参考まで、今朝の馬渕さんの東洋経済オンラインの記事です。
5月までの日本株の値動きを予想しよう | オリジナル | 東洋経済オンライン