セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「売る」のではなく「伝える」

先日、BSのニュース番組に、今年1月に全役職を退いた、ジャパネットたかたの高田明・元社長がゲスト出演していました。

ジャパネットたかたは、街の電気屋さんから、地元長崎のラジオショッピングで通販に進出、そこで商品が飛ぶように売れて話題になり、その後のTVショッピングで急成長した企業です。

キャスターの「どうやってそんなに売れたんですか?」との質問に対して、高田社長の答えは次のようなものでした。

“この商品を『買ってください』ではお客様は買ってくれない。その商品のいいところを、お客さんに分かりやすく伝えることができれば買ってくれる。だから、どのように伝えればよいか、ということをいつも一生懸命考えた。”

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この話で、最近似たような話を聞いたのを思い出しました。

ひとつは、「いい会社をふやしましょう」のイベントで、地域の伝統工芸を活かして子ども用品を販売している、(株)和える代表の矢島里佳さんが語っていた、商品の販売と顧客コミュニケーションについての話。

“社員に対して、「自分は『商品を売る人』ではなく、その商品の『物語を伝えるジャーナリスト』だと思いなさい」と教えている。”

「いい会社の理念経営塾」新春スペシャル(ローカルキャリアカフェ 川人ゆかりさん&和える 矢島里佳さん)

そしてもう一つは、途上国で元子ども兵の支援や地雷除去支援を行っているNPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也さんの言葉。

“共感を呼び行動を起こしてもらうには、たしかな熱を持って「伝えること」(=相手に伝わること)が何よりも大切。”

ただ、うちのNPOはこんな素晴らしいことをやっているんです、だから寄付してください、では今のように活動が軌道に乗ることもなかったでしょう。

テラ・ルネッサンス鬼丸昌也さんの講演会に行ってきました

上の3人の方は、業種も分野も違いますし、話のテーマや方向性も全く別です。
ただ、共通しているのは、自分たちの商品やサービスを販売して買い手に満足してもらったり、継続して支持してもらうには、どう売るか?よりも、どう伝えるか?の方が大事だと言っていることです。

「売る」は一方向だけれど、「伝える」はその裏側に相手の気持ちの中の「伝わる」という反応があるので双方向、とも言えると思います。

そして、この「売る」ではなく「伝える」という態度は、実は、投資信託や生命保険のような金融商品の売り手にこそ求められることでは?と感じます。

金融商品はカタチもなく、目に見えませんし、その商品を持つことによる価値やメリット、デメリット(リスク)が分かりにくい特徴があるからです。
一部の直販投信などを除いて、作り手の顔が見えにくいという点もあるでしょう。
(高田社長は作り手ではないのに、さも作り手であるかのように伝えることができるのは凄いことです)

ここで「伝える」と言っているのは、金融商品販売法で業者に課されているリスク説明のような手続的、形式的なものではありません。

買う人の人生にその商品がどんな素晴らしい価値を与えるのか? その商品はどんな想いでつくられているのか? というまさに金融商品の「存在意義」の部分を、売り手がしっかり理解し、分かりやすく伝えよう、という姿勢を持ってくれれば、そして、そういう会社を私たちが選ぶように努力すれば、(理想論とは思いますが)「売りやすい商品を売る」「手数料が手っ取り早く稼げるものを売る」ということもなくなるのかもしれません。

※家電や車などの商品と、金融商品は同一に語れませんし、現状では手数料が手っ取り早く稼げるもの=われわれ顧客に人気があるもの、なので、もちろん売り手側だけの問題ではありません。

そして、短期的には「売る」方が儲かるとしても、長期的には「伝える」ことに重点を置いた会社が顧客に支持され、永続していくのではないかと思うのです。