セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

鎌倉投信・第7回「結い2101」受益者総会(その2)

9/10の鎌倉投信・第7回受益者総会のレポの続きです。
後半は、法政大学・坂本光司先生の講演と、投資先4社の経営者によるパネルディスカッション。

(前半記事)鎌倉投信・第7回「結い2101」受益者総会(その1)

●法政大学・坂本光司教授基調講演

坂本先生は、日本中の「いい会社」を自らの足で訪問し、本や講演で紹介することを通じて、正しい経営を広めるための活動をされています。鎌田さんや新井さん達の起業にあたって、背中を押してくれた方でもあります。

代表著「日本でいちばん大切にしたい会社」は、鎌倉投信創業のきっかけの一つになりました。いわば鎌倉投信の思想的バックボーンです。

本はいくつか読んだのですが、お話自体は初めて。
69歳の今も、企業訪問、講演活動に執筆と精力的に活動されていて、第一回の総会以来6年ぶりの貴重な機会でした。

坂本先生は「本を通じて世の中を変える」という一心で頑張ってきたとのこと。言葉一つ一つの力強さは並々ならぬものがありました。

坂本先生による正しい会社像の根本は、「人を大切にする会社」「人を幸せにする会社」です。
「人」は、従業員とその家族を第一に、取引先、下請企業、顧客、地域、そして出資者といった全てのステークホルダーです。「三方よし」を超えて「五方よし」と表現します。

例えば、最近台湾で訪問したというある外食産業の会社(社員2,000人)の例です。

・非正規が多い外食業界なのに正社員が9割。残り1割は非正規だが、会社の都合ではなく社員がパートを希望しているからそうしている。
・給料は業界平均の1.5倍。
・社員2,000人の平均残業時間は月30分!(日ではありません)
・3年以内の離職率はわずか2%。
・100人いればまわる現場に140人の社員を配置。
・障碍者も正社員として積極的に雇用。

これだけ社員を大切にしながら、20年以上連続黒字です。
その理由は、リピーターと口コミで広告宣伝費はほぼゼロ、なのに客単価が業界の1.7倍だからだそうです。顧客に接する社員を大切にすれば、結果的に会社が成長する好例です。

他にもいろんな会社が紹介されました。
その中で響いた坂本先生の言葉です。

・会社は人間のための営み。会社は人を幸せにするためにある

利益はあくまで結果に過ぎない。利益は人を大切にする経営を行ったことに対する社会からのご褒美。

・(障碍者雇用に関連して)人は、他人にお礼を言い続ける人生ではなく、他人からお礼を言われることで幸せを感じる。だからみんな働くことで幸せになれる

1時間はあっという間でもっと長く聞きたかったです。

●投資先“いい会社”の経営者自己紹介&パネルディスカッション

最後のパートでは、投資先企業の4人の経営者が登壇しました。
業種は違えど、若くして社会を変えてきた起業家ばかり。この豪華メンバーが揃うのは、鎌倉投信の受益者総会をおいて他にないでしょう。

・株式会社カヤック 代表取締役CEO 柳澤大輔さん
・サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久さん
・株式会社マザーハウス 代表兼チーフデザイナー 山口絵理子さん
・株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充さん

「自己紹介」というと平凡ですが、事業や会社の紹介ではなく「自分語り」を聞けたのはよかったです。いい会社、しかもベンチャーを理解するには、経営者の人となりと、想いを知ることから始まるからです。
(後々懇親会で新井さんから聞いたのですが、そういう意図でわざわざタイトルを「事業紹介」ではなく「自己紹介」としたそうです)

<カヤック・柳澤大輔さん>

・面白法人の「面白さ」とは、「新たな価値が増える」「選択肢が増える」そして「社員一人ひとりが主体的に会社に関われる」こと。

・面白く働くためのキーワードは「つくる人」になること。一人ひとりが会社をつくる側、地域をつくる側、サービスをつくる側にまわれば、楽しくなる

一流になる極意は「とにかくしつこく長くやること」。長くやり続けるうちに、自分もタマネギのように「剥いても剥いてもカヤック」な人になってきた。

社員の9割がクリエイターというカヤック。「カマコンバレー」で鎌倉の地域づくりも行っています。
社内外でクリエイティブな活動に関わることで、仕事を面白くする「面白法人」のビジョンが分かりました。柳澤さんは、コモンズ投信の社会起業家フォーラムで話を聞いたことがありますが、今回は長く聞けてよかったです。

<サイボウズ・青野慶久さん>

・2005年に社長を引き継ぎ、1年半で会社を買いまくったが、買った会社がことごとく赤字になり危機に。そこで初めて経営に命を懸けていなかったことに気づいた。それから、売上や利益を求めるのではなく「いいグループウェアをつくる」ことに集中した。

・2005年当時の離職率は28%。「みんなが辞めないような会社にするにはどうすればいいか?」と思ううちに、社員の自由な働き方を次々受け入れていった。(2015年には3.7%にまで低下)

・サイボウズなんて最悪なくなったって大したことない、と思ったら、むしろ社会にとって大きなことができるのではと発想が転換した。

利益を出すぐらいなら、社員ひとりひとりの自由な働き方をサポートするためにその利益を使おうと考えた。「利益を出さない」と言い切ることで、むしろ興味を持ってくれる株主が増えた。

イクメン社長としても有名になり、最近は働き方に関する政府の委員などもやっている青野さん。
柳澤さんやマザーハウスの山崎さんも、青野さんの経営哲学を「振り切れている」と絶賛していました。本を読んでみたいですね。

 
 
 

 

 

 

 

 

 

<マザーハウス・山口絵理子さん>

・途上国の現場が見たくてバングラデシュに留学したとき、途上国は「可哀想」ではなく「光るモノ」を持っていることに気づいた。現地の麻をただの麻袋ではなくバッグにしょうと決めた。

お客様の声を生産現場にフィードバックすることが品質改善のために一番大切。だから、起業当初の苦しい時期から自分のお店を持った。入谷のわずか8坪のお店が「お客様の声を聞く」マザーハウスの原点。

・途上国には素晴らしい伝統工芸や職人がたくさん残っている。そこにスポットを当て、大量生産でもフェアトレードでもない「第三の道」を求め続ける

山口さんは、マザーハウス起業以来10年、「途上国から世界に通用するブランドををつくる」ため走り続けてきた方です。言葉からはゆるぎない意志が伝わってきました。

飛び入りで登壇した副社長の山崎大祐さんは、山口さんが現地に飛び込んで地元の職人たちのハートをつかむ力を「クレイジーなまでの突破力」と評していました。最近は、バングラデシュ、ネパールに加えて、インドネシアでのジュエリーづくりを開始しています。

ゴールドマンサックス出身の山崎さんは、鎌倉投信に特別なシンパシーとも言える気持ちをお持ちです。IPOもVCの出資も断ってきた山崎さんが、山口さんを説得して鎌倉投信のお金を受け入れたエピソードも紹介されました。

<ユーグレナ・出雲充さん>

・小さい頃から途上国支援への憧れが強かった。世の中に貢献するには、無償のボランティアでなければいけないと思っていたが、バングラデシュでグラミン銀行(※)のインターンシップに携わり、考えが変わった。

・1日100円しか稼げなかった100万人もの人たちが、グラミン銀行の融資をもとに起業して人を雇用するまでになった。ボランティアでなくビジネスにこそ大きな可能性があると知り、グラミンのようなビジネスをしたいと思った。
(※)グラミン銀行・・・ムハマド・ユヌス氏創設のマイクロファイナンス機関。2006年にノーベル平和賞受賞。

・「バングラデシュに行ったこと」「ミドリムシに会えたこと」が今の自分をつくっている。しかし、なぜバングラデシュ?なぜミドリムシ?と言われると、ご縁としか言いようがない。一生を懸けるものに理由なんてなくてもいいのかもしれないと思う。

出雲さんの話は一番面白かったです。グリーンのネクタイで登場し、よどみなくミドリムシを語る姿は独特のオーラがありました。
笑いや間で聴衆を引き込む力はとびぬけていて、完全に場の空気を自分のものにしていました。まさに「全部持って行った」感じでした。

鎌倉投信がユーグレナに投資を決めたのは、バングラデシュの子どもたちに栄養失調を防ぐミドリムシクッキーを配る事業など社会貢献の要素を評価してのことです。(ユーグレナGENKIプログラム

ミドリムシの凄さや、力を入れているバイオジェット燃料の話だけでなく、起業の出発点となったバングラデシュでの体験を語ってくれたのはとても良かったです。ちなみにユーグレナの社員は全員マザーハウスの名刺入れを持っているそうです。

●第7回総会を終えて

今年の総会は、1,000席用意した座席がほぼ埋まり、Webでの配信もされました。鎌倉投信の理念と、いい会社とともに歩む輪が広がっていることを実感しました。

席を多く取った分、企業展示ブースは少な目でしたが、マザーハウスやユーグレナのブースには17時の終演以降も人だかりができていたのが印象的でした。
特に、マザーハウスは、多くの社員さんが参加し、ディスプレイも本格的でさすがでした。今回の総会をきっかけにファンになった人もいそうです。

来年は、9/9に一昨年と同じ京都国際会館で開催予定です。「匠」がテーマで、今から楽しみです。

(懇親会場の塚田農場にて)