荏原の株主総会に出席しました。
同社は2022年4月から保有中。今月上場来最高値を更新するなど、株価好調の中での総会でした。
事業報告
2023年度決算は、売上高、営業利益ともに伸長。
YoY 売上収益+11.5%、営業利益+ 21.9%で過去最高。
ROIC、ROEはともに2桁で上昇基調。
セグメント別でも、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」「環境」「精密・電子」の5事業全てで増益でした。半導体関連の「精密・電子」が牽引しているイメージが強いですが、実際には従来からの柱である「建築・産業」や「エネルギー」向けのポンプなども伸びています。
2025年度までの中計(E-Plan2025)の進捗も良好です。ROIC、ROE、営業利益率はすでにほぼ目標達成。 2024年度以降も、海外でのM&Aや半導体関連の設備投資を積極的に進めていくとのこと。
質疑応答
●ガバナンス、取締役会について
ガバナンスについては、同じ株主から2年連続質問があったため、会社側はわざわざ資料を作って説明しました。
その株主の意見はこのようなものです。
・取締役会のメンバーが社内からは浅見社長のみで、社外役員ばかりなのは問題だ(事業の素人に取締役が務まるのか? 社長のやりたい放題になるのでは?)。
・執行役が代表の浅見社長以外はみんなヒラなのは問題だ(常務や専務がいない、ナンバー2が不在では?)。
もっともらしく聞こえますが、執行と監督の分離というガバナンスの基本中の基本に対する理解が欠けていますし、こういう質問が出ること自体が、日本のガバナンスが遅れている証左と思います。
会社側からは、以下の説明がありました。
・執行とモニタリングを明確に分離することが最も大事。
・後継者はしっかり育成している。専務や常務は数年前に廃止したが今の体制が十分機能している。
・取締役会の中での執行者の責任を明確にするために、社長1名のみが入っている。
・執行役も取締役会に必要に応じ陪席し、社外役員に対して事前説明もきちんとしている。
昨年も引用した松田千恵子さんの本より。取締役=出世のゴール、といのは過去の常識です。経営の進化に株主の意識が追いついてないのかもしれません。
「取締役が業務執行を行うのは当たり前」、むしろ、「取締役とは業務執行を行うエライ人」という社会通念があるのではないでしょうか。
(「コーポレートガバナンスの進化」)
●資本効率や資本コストなど
Q)ROICとROEのどちらを重視しているのか?
ROICは、株主資本だけでなく、借入も含めた投下資本に対するリターンであり、内部管理上は使いやすい。ただし、株主に対してはROEも重要。なので併用している。
荏原では、全社ROICだけでなく、セグメント別のROIC目安も開示している。
Q)環境やインフラなど国内中心ビジネスのROICが低いがどう考えるか。
ROICの絶対値が低くても、WACCが小さければ価値は創出できている。成長性と安定性、リスクとリターンのバランスを考えながら全社の事業ポートフォリオを最適化していく。
Q)資本コスト低減のための施策は?
基本はDEレシオの調整。開示の充実、IR強化。(これはごく一般的な回答でした)
そのほか、人的資本経営、水素ビジネス関連、CMP装置の輸出規制リスク、などの質疑が出ました。
荏原を推している理由に、ビジネスそのものの魅力に加えて、ガバナンスや資本コスト重視の取り組みのレベルの高さがあります。その部分が確認できてよかったです。
最後に、浅見社長より、「社会価値や環境価値を高めるにこそ、事業の収益性を高めていく必要がある」とのまとめがありました。
1:5の分割も予定しており投資家のすそ野も広がりそうです。保有継続します。