セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

丸井グループ・第87回株主総会

丸井グループの株主総会に出席しました。2020年の途中からちょうど3年投資していますが、今回が初参加でした。

2023年3月期の事業報告と、青井社長による「今後の方向性」のプレゼン、議案決議と質疑応答、という流れでした。

1.事業報告(主なトピック)

2023年3月期決算

利益水準や資本効率(ROE、ROIC)はコロナ前の水準まで回復しつつあります。グループ総取扱高も過去最高を記録しました。

(2023年3月期本決算説明資料より)

小売セグメント

体験型店舗や、食・サービス関連、イベントなどの「売らない店」が着実に増加。非物販カテゴリーの面積割合は56%(70%が目標)。

テナント向けには、オンライン出店サービス「OMEMIE」が好評とのこと。大手のSCで店舗の個別区画の賃料をネットでオープンにすることはまずないので画期的だと思います。

フィンテックセグメント

2023年3月期のクレジット取扱高&エポスカード会員数は過去最高。家計シェア最大化(家賃払い、公共料金、ECなど)が奏功。アニメやキャラとのコラボカード、ヘラルボニーカードなどの「好きを応援するカード」が堅調。

共創投資

2023年3月時点の累計投資額は269億円。
最近の事例として、ユーグレナやツクルバへの出資、デジタル債(ソーシャルボンド)発行による、途上国でのマイクロファイナンス支援などの取り組み紹介。
※ユーグレナもツクルバも私の投資先です。

デジタル債は発行額2億円に対して35億円もの応募があるほどの人気で、私も2回申し込みましたが外れました。ちなみに、デジタル債を申込んだ顧客のカード利用額は増加したとのデータがあり、顧客ロイヤリティ向上にも貢献していると思われます。

株主還元

B/S最適化(自己資本比率25%まで低減)達成を受け、今期(2024年3月期)から、従来の配当性向、総還元性向に代えてDOE(株主資本配当率)を導入。DOE8%を目安に、安定的な配当or増配を目指す。

2.今後の方向性(青井社長)

人的資本経営を中心に、長期的な企業価値向上をどう目指していくか、青井社長のプレゼンでした。インパクト創出やサステナビリティを強く意識した内容でした。

・2005年以降続けてきた企業文化の変革が形になりつつある。従業員エンゲージメントは2012年からの10年で大きく改善。

・人的資本投資(17/3期~21/3期:320億円)によるリターン(新規事業創出によるIRR)は12.7%。資本コストを上回る。

・長期ビジョン(VISION2050)で掲げた「インパクトと利益の二項対立を乗り越える」取り組み例として、「ヘラルボニーカード」と「応援投資」(デジタル債)の事業を紹介。

・「インクルーシブな社会を共に創る」とのミッション実現に向けて、企業理念の実践を定款に記載する変更を実施。すべてのステークホルダーへの配慮、「利益」と「しあわせ」の調和、ビジネスを通じた社会課題の解決と利益の両立などを明記。

・「社会課題解決企業」へと変革していくために必要なのは、人の「創造力」。創造力を全開にするために、①働き方と組織のイノベーション、②DXの2本柱を推進。

・DX推進では、グッドパッチとの合弁(Mutureの設立)によるIT専門人材採用や、同社代表の土屋尚史氏の執行役員招へいなど。

・人的資本投資の拡大によって、高い資本効率の達成と、無形資産比率向上による企業価値増大を目指す。将来目指す水準は「PBR5倍」(ROE25%×PER20倍相当)。

(2023年3月期有報より)

3.質疑応答

気になったものをメモ。(私の意訳あり)

Q)DOE導入の理由は。

A)DOEは高成長と高還元を両立する指標として重要。利益が積み上がれば株主資本も増えるので、結果的には増配になる。コロナでROEが一時的に低下していたが、コロナ前の水準まで戻ったので、このタイミングで導入した。

Q)(社外取締役:みさき投資 中神さんへ)投資家が役員になることの意味は。

A)まず、大前提として、丸井グループは株主だけを重視するのではなく、全てのステークホルダーのバランスを最適化する経営を志向している。その上で、私の役割は株式市場の目線を経営に取り込むこと。中計のアップデート、新しい還元方針策定(DOE導入)など各場面で、株主視点を反映できていると自負している。

Q)(社員に株式を交付したが)社員株主が有給を取らずに総会に参加するとしたら「サクラ」的なものではないか。ガバナンス上問題ないのか。

A)社員株主は有給を取って総会に参加している。なお、今回の社員への株式交付にあたり、社員が自主的に株式や株主の役割について勉強会をやっている。社員が経営視点を持つために、株式を保有する意味は大きい。

Q)競合各社と比較してエポスカードの強み、差別化要因は?

A)クレジット市場全体の成長率をエポスカードの成長率は上回っている。要因は、創業来の「信用の共創」がベース。小売事業と共創投資と三位一体の取り組み、年会費無料のゴールドカードによるメインカード化、家計シェアの最大化が効果を上げている。アニメやキャラなどの「好きを応援する」カードが、ゴールドカードに次ぐ柱に育ってきている。QRコード・スマホ決済との競合については、カードのタッチ決済の利便性を訴求していく。

Q)競合各社は銀行業を行っている場合が多い。銀行業を持つことは検討しないのか。

A)昔からその議論はあるが、銀行業は非常に規制が強くメリットよりデメリットが大きいため考えていない。ただし、ネオバンクなどの様々な可能性は排除しない。

Q)優待を廃止した理由は?

A)機関投資家も含む全ての株主に公平に還元するため。優待よりも配当の方が妥当と判断。

所感

参加者に占める女性割合も高く(ざっくり3~4割?)、年齢層も様々で、株主のダイバーシティは他社と比較すると高いと感じました。

人的資本への投資を軸に、「インパクトと収益の両立」を前面に押し出した丸井らしい総会でした。同日付けで、丸井グループ初のインパクトレポートも開示されました。

青井社長のプレゼンでは、丸井が、本当に「人」を企業価値の源泉と考えているのが伝わりました。社員さんの自発的かつ部門横断的な取り組みによって、新たな事業の芽が生まれているのが素晴らしいと思います。「公認イニシアティブ」という、部署の垣根を超えた戦略課題検討チームも増えており、丸井ならではの「手挙げの文化」が浸透してきています。

ただ、人的資本への投資が新規事業創出や無形資産の蓄積を通じて企業価値向上につながるという流れは理解できつつも、「PBR5倍」(ROE25%×PER20倍)という将来の目標はかなり野心的だと思います。

ここ10年ぐらい、自己資本比率を25%程度まで下げてきましたが、それでも現状のROEは10%そこそこです。レバレッジをこれ以上高めにくい中で、ROE25%というバカ高い数字をどう実現するのか、より具体的な道筋を示してほしいと思いました。

会場には、共創投資先企業の紹介ブースがありました。障がい者アーティストの人達の作品を展示したヘラルボニーのギャラリーは素敵でした。