セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

荏原製作所の株主総会に参加しました

荏原(6361)の株主総会に初めて参加しました。

荏原はこんな会社です。

・産業機械メーカー。ポンプ・送風機・圧縮機の最大手。
・風水力事業の建築・産業(ポンプ、冷熱機械、送風機)、エネルギー(ポンプ、コンプレッサ・タービン)、インフラ(ポンプ、送風機)機械の製造・販売。
・環境プラント事業、精密・電子事業(ドライ真空ポンプ、CMP装置等)も展開。
・CMP半導体製造装置は世界2位、LNGの製造設備向けカスタムポンプは世界トップクラス。(マネックスの銘柄スカウター抜粋)

祖業はポンプ。産業やインフラを支える縁の下の力持ちであり、一方でCMPなど半導体関連でもトップクラスの技術を持ちます。創業は1912年。創業精神は「熱と誠」。売上収益は約6,800億円、社員数は19,000人。

セゾン共創日本ファンドを通じて知り、ちょうど1年前から保有しています。長期的な成長性を感じたのが一番ですが、資本効率重視の経営やガバナンス面でも進んだ会社です。

今回の総会は、前期の報告に加えて、2023年度から三ヵ年の新中計(E-Plan2025)の説明がメインでした。

新中計のポイントは以下です。
・「プロダクトアウト」から顧客起点の「マーケットイン」への転換
・精密・電子(半導体)、建築・産業セグメント中心の成長
・営業利益率10%以上、ROIC10%以上、ROE15%以上の達成
 売上収益1兆円、時価総額1兆円を目指す(総会スライドに記載ありました)

マーケットインの一環で、今期からセグメントを対面市場ごとに見直します。投資家目線でも分かりやすくなります。

また、財務指標としては、従来のROICに加えて、ROE目標も追加されました。株主資本コストに対応したリターン目標を掲げるのは株主目線も大事にする姿勢で妥当と思います。

一方、上の目標数値は、ほぼ現時点で達成済であり、かなり控えめな印象です。浅見社長のご説明では、2030年度までの長期ビジョン達成に向け、この3年間は社内の基盤整備や将来への投資を進める期間であるためとのことです。

今期の会社予想も営業利益率やROEはダウンする計画です。どんなお金の使い方をしているか、継続ウォッチしたいと思います。

「今回の3年間については技術開発、生産設備の両面で、収益性をさらに改善しながら競争力を付けるためにしっかり投資をし、市場にしっかり向き合って競争力を付けるためには、26年よりも先に成長するためには何をしなければいけないかということを、しっかり事業責任者が向き合ってやる、必要な投資は行うという期間と位置づけている。」(新中計説明会Q&A)

質疑応答では、ガバナンス、人材戦略(従業員エンゲージメントなど)、非財務目標(カーボンニュートラル、ダイバーシティ)などについてかなり突っ込んだやり取りがあり、面白かったです。

ガバナンスについて言うと、荏原は、プライム市場でもトップクラスの進んだガバナンス体制を確立していると評価されています。

「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2022」において、特別賞・経済産業大臣賞を初受賞 | 荏原製作所

一方、ある株主さんが、「取締役会のメンバーが社外取締役ばかり。業務が分からない素人ばかりでちゃんと経営できるのか?」という質問を投げかけました。この方は昨年も質問したそうです。招集通知に載っています。

この質疑を聞いていて、投資家のためのガバナンス改革のはずなのに、当の株主が「監督と執行の分離」の意義を否定しているようで切なくなりました。取締役は社内で出世した人がなる役職、という昔の常識にとらわれているのは実は株主なのかもしれません。

「コーポレートガバナンスの進化」で松田千恵子さんが書いていた、社外取締役は「独立」かつ「非業務執行」であるからこそ意味がある、という一節を思い出しました。