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「ESG情報開示実践ハンドブック」を読んでみた

3/31に、JPXと東証が、「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表しました。

ESG投資の広がりとともに、企業が統合報告書などを通じて、さまざまな非財務情報を開示する場面が増えています。また、開示のためのガイドラインや基準も乱立気味です。

そんな背景のもと、ESG情報の開示を行うためにどんな手順で、どのように進めればいいのか、企業の担当者向けに基本的な内容をまとめた参考書が、このハンドブックです。

ハンドブックは、4ステップで構成されます。
これはそのまま、ESG課題の特定から指標設定、開示&エンゲージメントという企業のESG活動のステップとなります。(P6)

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一通り目を通しました。

私は、上場企業のIRやCSR部門で働いたこともなく、運用会社のアナリストでもないので、ESG活動やエンゲージメントに直接関わることはありません。ただ、ESG投資に関心のある一個人投資家から見ても参考になる、よくできた資料です。

一番は、企業の観点で、ESG活動の全体像を知ることができる点です。
長期的な企業価値向上の観点から、どのように自社にとって重要なESG課題(マテリアリティ)を特定し、戦略とビジネスモデルの中に位置づけ、実行し、開示していくか、一連の流れがおさらいできます。

各項目ごとに、具体的な事例も載っています。
例えば、下記はある金融・保険業F社のマテリアリティ分析の例です。(p24)

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これは、食品メーカーI社の指標設定の例です。(p35)

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また、機関投資家(実際は運用会社)が、ESG投資にあたって投資先企業や関係機関とどう変わっているか、シンプルに示されています。(p40)

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数多くある、開示のための各種ガイドラインについても、趣旨や内容の違いが整理されていて概略を知ることができます。ここは特に参考になりました。詳しく知るには各団体や枠組みのHP等で勉強する必要がありますが。
- SSEイニシアティブ、価値協創ガイダンス、TCFD、SASBスタンダード、国際統合報告フレームワーク(IIRC)、GRIスタンダード

まとめとして、ハンドブックで示されている大事な部分を引用します。

投資家が中長期的な視点で企業価値を評価するうえで有用なESG 情報の開示を目指す際には、企業は、マテリアリティとして特定したESG課題に関するリスクと機会と、戦略、ガバナンス体制、指標等、最終的には企業価値との結び付きをわかりやすくストーリーとして示す必要がある。(p39)

「当社は社会に役立ついいことをたくさんやっています」というアピールではなく、ビジネスを通してさまざまなESG課題に取り組むことが、具体的にどう長期的な価値向上につながるのか、投資先企業には分かりやすく示してもらいたいです。

 

自分の場合、「投資家から見たESG」については運用会社とのコミュニケーションや、実際の運用を通じて考えることが多いですが、企業側の視点はインプットする機会が少ないので役立ちました。

統合報告書やサステナビリティレポートも、ハンドブックを参照しながら読むと、より深く読み解けると思いました。

ESG情報開示実践ハンドブック | 日本取引所グループ

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