コモンズ投信・渋澤さんの「SDGs投資」出版を記念して、藤沢久美さんとのトークイベントがありました。
「SDGs投資」 21世紀のサスティナブルな投資とは? ゲスト:藤沢久美さん
意外な組み合わせと思いきや、2009年にコモンズ30ファンドを設定した際、初回のセミナーのゲストが藤沢さんとさわかみ投信の澤上さんだったそうです。コモンズのイベント登壇はなんと11年ぶり。
SDGsと投資との関係について、興味深い話が聞けたので、いくつかシェアします。
企業活動とSDGs
藤沢さん:多くの企業が、自社の事業がSDGsの17のテーマのどれに当てはまるかを探して、ラベルを貼っていくだけの作業をしている。それで「当社はSDGsやっています」というのにはとても違和感。
17のテーマよりもSDGsの「5つの原則」の方がより重要。この5つに基づいて経営が行われているか、自社のビジネスが合致しているかを確認することが大事。
※5つの原則:(1)普遍性(2)包摂性(3)参画型(4)統合性(5)透明性
(外務省HP「持続可能な開発のための2030アジェンダ」より)
⇒ これは同感です。とりあえず各事業に関連するSDGsの目標をリンクさせて、「わが社はSDGsに取り組んでいます!」というパターン。経営のあり方そのものをSDGs志向に変えなければ、SDGs経営とは言えないでしょう。
SDGsにしっかり取り組んでいると感じる統合報告書の例は?
渋澤さん:「味の素」と「丸井グループ」。
味の素は、かなり早い時期から「SDGs」という言葉を統合レポートに載せ始めた。
丸井グループの「共創レポート」は、同社のファイナンシャル・インクルージョンの考え方が全社に浸透していることがよく伝わってくる。
共創経営レポート(統合レポート) | IRライブラリー | 投資家情報 | 丸井グループ
⇒ 味の素は以前ブログで取り上げました。丸井グループは個人株主でもあり、tsumiki証券の取り組みをはじめ関心を持っています。2社とも、取り組むべき社会課題と、企業価値向上の間のストーリー付けがわかりやすいですね。
インパクト投資について
渋澤さん:インパクト投資が広がるにつれ、「なんちゃってインパクト投資」もある。インパクト投資に絶対必須なのは、インパクトの測定(measurement)。経済活動のおまけとして社会的なアウトカムがあるのではなく、インパクトを意図して経済活動を行った結果、財務的リターンも生じるのがインパクト投資。
ESG投資がもっと進むと、上場企業も自社の事業の社会的インパクトの評価・測定や、目標設定が求められるようになるのではないか。
⇒ 特に前段の部分にとても同意です。SDGsと同じく、いわゆるインパクト・ウォッシュが広がっていく可能性は大いにあります。投資家や消費者も、単なるイメージアップやPRのために「インパクト投資」が使われていくことがないか、チェックしないといけないと思います。
投資教育について
藤沢さん:投資教育の前に、勤労教育、そして消費教育が必要。
働いてお金をもらうことの意味や、お客さんとして商品を買うことの意味を知ることが大事。
例えば、マクドナルドでビッグマックを買ったらそのお金はどこにいくか? 働いている人にわたり、お店の家賃になり、原材料の代金になる。そしてその原材料はどこの国で、誰がどのようにつくったものか?(藤沢さんがご自身の投資教育の中で取り上げたケース。)
お金の流れが見えてくると、働くことや消費すること、投資することの意味も分かってくる。
⇒ これも我が意を得たりです。投資教育というと、狭義のマネーリテラシーとか株式投資ゲームのようなものばかり。学校でこのようなお金と働くことについての正しい教育ができていないことが、日本で長期の投資や寄付が根付かない根本的な原因だと思います。
藤沢さんにとって、SDGsとは、「全ての人が社会参画すること」。どんな人のどんな小さな行動も、社会に何らかの影響を与え、社会を変えていきます。誰一人取り残さないということは、誰一人残らず参加することでもあります。
示唆の多いトークセッションでした。コモンズ投信さん、ぜひYoutube等で公開頂けるといいのではないでしょうか。
実は肝心の渋澤さんの本をまだ読んでいないので、、読ませていただきます。