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「日本におけるインパクト投資の現状2019」をチェック

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GSG日本国内諮問委員会が、日本のインパクト投資市場についてのレポートを出しています。

経済的リターンと社会的インパクトを同時に追求するインパクト投資は、日本でもさまざまなかたちで拡大しています。私も個人レベルで、セキュリテやクラウドクレジット、ベイリー・ギフォードのインパクト投信などで投資しています。

サマリー、本文はこちらの通りです。

「日本におけるインパクト投資の現状2019」を公開しました。:GSG 日本国内諮問委員会

日本のインパクト投資市場

金融機関、運用会社、PE/VC、財団などへのアンケート調査に基づき、2019年12月時点のインパクト投資残高は4,480億円以上と推計されています。2014年当時は170億円だったそうで、5年で大幅に拡大しました。

投資対象分野も、教育、ヘルスケア、IT、ダイバーシティ、エネルギー・気候変動など多岐にわたります。

SDGsとのリンク

インパクト投資は、社会や環境へのポジティブなインパクトを生み、ネガティブなインパクトを減らすものなので、当然ながらSDGsとの親和性が高いです。

投資対象の選定や、インパクト測定にあたりSDGsを指標とすることも多く、ESGインテグレーションならぬ「SDGsインテグレーション」(SDGsを投資プロセスに組み込む)が進んでいるようです。(私が勝手につけた言葉です)

国内のインパクト投資の具体例

インパクト投資は、投資対象も投資手法も様々でイメージがつかみにくい面があります。具体的な案件を見ると理解が深まります。3つ紹介されています。

・日本ベンチャー・フィランソロピー基金による株式会社AsMamaへの投資
・JICAによる五常・アンド・カンパニーへの出資(10億円)
・新生インパクト投資・社会変革推進財団・みずほ銀行の日本インパクト投資2号ファンド(26億円)

最初のAsMamaのケースは、金額は小さいものの、財務的なリターンと社会的なインパクトを両立した成功事例として分かりやすかったです。

AsMamaは、「子育てシェア」など地域での共助による育児をサポートしている会社です。2016年のコモンズ投信の社会起業家フォーラムで代表の甲田さんの話を少々聞いたことがあります。

本件では、ベンチャー投資でも用いられるCB(転換社債型新株予約権付社債)の引受けによりAsMamaに対して3,000万円の投資が行われました。他の株主から経営に対するプレッシャーがかからないよう、社会性を担保するミッションロック条項を加えたり、プロボノや役員派遣による伴走支援をセットで行うなど、目標とするインパクトを出すための工夫が施されています。

成果をまとめた「協働成果レポート」はこちら。

株式会社AsMama | 日本ベンチャーフィランソロピー基金 / Japan Venture Philanthropy Fund

こういう投資に、個人も、参加できる機会があればいいなと思います。

インパクトウォッシュを排除するために

一方、レポートではこんな指摘もあります。

「インパクトウォッシュ(実態が伴わないインパクトがあるかのように見せかけること)等、インパクト投資を単純にマーケティングとして利用する動きもあり、インパクト投資が本当にインパクトを生み出しているのか疑問視する声も存在している。」(p44)

これは、ESGやSDGsにも当てはまりますが、「いいことやってます」というアピールや、安易な資金調達手段としてインパクト投資が使われることのないよう、投資家はじめ関係当事者がしっかりチェックしないといけないと思います。どんな投資にも、社会へのポジティブな影響は想定し得るので、言おうと思えばなんでも「インパクト投資」と言えてしまうからです。

本レポートにもある通り、投資実行前と実行後に、社会や環境に対するインパクトを定性的・定量的にしっかり評価しているか、また、きちんとインパクトが生み出されるような仕組みがスキームに組み込まれているか、精査が必要です。

 

ほぼ同時期に、同じGSG委員会がこんなレポートも出しています。世田谷コミュニティ財団も運営されている、水谷衣里さんがまとめられました。

「インパクト投資拡大に向けた提言書2019」を公開:GSG 日本国内諮問委員会

インパクト投資も、むやみに拡大しようとするといわゆるウォッシュが出てくると思うので、ここで提言されているような取り組みを根付かせながら、質の高いインパクト投資が着実に育っていくことを望みます。

同時に、機関投資家や金融機関向けだけでなく、個人がインパクト投資を身近に感じられるプラットフォームが増えると、社会への浸透も進むのではと思います。

 

カテゴリ:ESG投資/責任投資

【昨年の記事】