セルフ・リライアンスという生き方

投資信託を中心にいい会社、いい事業にコツコツ長期投資。 社会とつながるソーシャルな投資や寄付も実践中。

「日本における社会的インパクト投資の現状2018」をチェック

国内の社会的インパクト市場の市場規模をまとめたレポート「日本における社会的インパクト投資の現状」の2018年版がGSG国内諮問委員会から公表されています。

リソースセンター:GSG 日本国内諮問委員会

日本における社会的インパクト投資の現状2018(PDF)

去年に続き内容をチェックしました。

社会的インパクト投資の定義

本レポートでは、GIIN(Global Impact Investing Network)の定義をベースに、社会的インパクト投資を、
社会面・環境面での課題解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資行動のこと」と定義し、あわせて「社会的インパクト評価の実施を視野に入れていること」を集計の基準としています。

社会的インパクト投資について考える場合、どこからどこまでが社会的インパクト投資なのか、そうでないのかを明確に区分けするのは難しいです。
私自身は、実際にお金を出す投資主体が投資に際して社会的なインパクトを(結果的にではなく事前に)「明確に意図」していることと、社会的インパクトの評価(定性的なものも含めて)が伴っていること、は最低限不可欠だと思います。

2018年度の社会的インパクト市場規模は3,440億円と推計

2018年度の社会的インパクト投資残高は2017年度の718億円から3,440億円に大きく増加(推計)しました。

最近の大きな動向として3つ挙げられています。

個人投資家向け金融商品の拡大
ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の広がり
メインストリーム金融機関のさらなる参入拡大

2017年の5倍近くに増加、ただし数字の中味には要注意

単純に見ると、日本の社会的インパクト投資は約5倍に大幅増加!となるのですが、この数字には注意が必要です。その理由は、2つあります。

・2018年調査では、社会的インパクト投資かどうかの判断基準が2017年よりも緩くなっている。(2017年調査の「資金使途が社会・環境分野に限定されているもの」という基準を除外。レポートp16)

・3,440億円のうち1,000億円近く?(※)を、野村アセットマネジメントが設定した外国株式の公募投信「野村ACI先進医療インパクト投資」が占めている。これについては後述。(※レポート上の集計時点が不明ですが、2018/11/5時点では815億円)

個人向けの社会的インパクト投資関連商品の拡大

個人的には最も関心のある部分です。レポートでは、以下4つが例示されています。

・クラウドクレジット
・プラスソーシャルインベストメント
・ミュージックセキュリティーズ(セキュリテ)
・野村アセットマネジメント(上記投信の設定によるもの)

クラウドクレジットやセキュリテは私もポートフォリオの一部で投資中です。
例えば最近はこんなファンドに出資しました。このうち、広島県の大腸がん検診の広域連携SIBについては、本レポートでも詳しくケーススタディが載っています。

これらは、経済的なプラスもある程度期待していますが、社会的リターン重視で投資をしています。まずまずお金は集まっており、インパクト志向の個人も少しずつは増えている印象を持っています。

「野村ACI先進医療インパクト投資」について

本レポートにおける推計市場規模の大幅な伸びに貢献していると思われる、同ファンドについて、目論見書等でチェックしてみました。為替ヘッジの有無等で4タイプ設定。

野村アセットマネジメント | 野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース 為替ヘッジなし 資産成長型 |

投資対象は「世界各国の(新興国含む)先進医療関連企業」で、実際の運用は米国の独立系運用会社アメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)が行います。ポートフォリオの9割が米国株で、実質的には米国株ファンドに近いです。第1期決算(2018年12月19日)時点の投資先は42社とかなり絞り込んだポートフォリオです。

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(交付目論見書より)

以下の4つの視点で組入企業を選定しています。社会的インパクトに配慮したESGインテグレーションという感じです。

当ファンドは「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標達成に寄与すると考える「革新的治療の提供」、「医薬品・医療サービスへのアクセス」、「医療費削減のソリューション」、「効果的な医療機器・サービス等」の4つのインパクト投資テーマを設定し、同投資テーマをもとに、社会的課題の解決に貢献する企業に投資を行います。(運用報告書より)

ACIは医療研究を支援し続けている運用会社ということで、ファンドの投資理念には賛同できる部分も多いです。また、大手金融機関が個人向けに「インパクト投資」を掲げた商品を出してきたのはいいことだと思います。

ただし、気になるのは、運用者自体はインパクト志向だとしても、投資主体である個人投資家が「社会的インパクト」を意図しているかどうかという点です。具体的に言うと、社会的インパクトというよりも「高リターンが見込める成長性の高いバイオ関連ファンド」として買っている顧客が多いのではないか、という推測です。

販売用資料を見ても、インパクト投資やESGの観点に触れているものの、ヘルスケア、バイオ関連の成長性のアピールが目立ちます。販売会社の野村證券の力の入れ具合や、株価動向次第でファンド規模が大きく動く(資金流出の)可能性もあると思います。

ちなみに、本ファンドが含まれるのであれば、私も保有している「世界インパクト投資ファンド」も社会的インパクト投資に含めていいのではないかという気もしますがどうでしょうか。

そのほか、日本の主要なインパクト投資プレイヤーや、機関投資家による投資事例なども紹介されており、「社会的インパクト投資」がどういうものか、日本でどのような状況にあるのかは本レポートで詳しく知ることができます。とても貴重ですし無料で開示頂いていてありがたいです。

個人的には野村の投信の資産規模が今後どうなるかは関心があるので、フォローしたいと思います。