個人が購入できるESG投資関連の投資信託が徐々に増えています。
今回は、UBSアセットマネジメントが2019年1月29日に設定した、ESG指数に連動するインデックスファンド「UBS MSCI先進国サステナブル株式インデックス・ファンド」を調べてみました。
UBS MSCI先進国サステナブル株式インデックス・ファンドとは
日本を含む先進国株式の中で、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点で優れた企業から構成される「MSCI ワールドSRI 5% イシュアー・キャップド・インデックス」に連動するよう運用されるインデックスファンドです。
ファンドの愛称は「みらいゲート・先進国」。
UBS MSCI先進国サステナブル株式インデックス・ファンド みらいゲート|UBSアセット・マネジメント
国内初のノーロード・低コストの先進国株SRIインデックスファンド、UBSアセット・マネジメントが設定 | モーニングスター
ベンチマークとなるESG指数
当ファンドのベンチマークとなる指数は、
「MSCI ワールド SRI 5% イシュアー・キャップド・インデックス(税引後配当込、円換算ベース)」です。
MSCI ワールド SRI 5% イシュアー・キャップド・インデックスは、親指数である、日本を含む23ヶ国の大型・中型株の先進国株式指数「MSCIワールド・インデックス」の構成企業をベースに、以下の条件で選定された企業群から構成されます。
・ESG/サステナビリティの観点から問題のある業種を除外(ネガティブ・スクリーニング)
・ESG格付けが高く、ESG不祥事スコアが高い企業を選定
・1企業当たりの配分比率を5%以内に制限
(UBS MSCI先進国サステナブル株式インデックス・ファンド みらいゲート|UBSアセット・マネジメント より)
ネガティブ・スクリーニングでは、兵器産業(核兵器・生物兵器など)、タバコ、アルコール、ギャンブル、アダルト、遺伝子組み換え食品、原発関係などを除外します。
ESG格付けは、37の課題についてAAA~CCCの格付けが行われ、新規はA以上、継続はダブルB以上が組入基準となります。不祥事スコアは28項目について0~10段階で評価が行われ、新規は4以上、継続は1以上が組入基準となります。(2019年1月現在)
例えば、環境の面でいくと、UBSの資料では、親指数(MSCIワールドインデックス)に比べて、このESG指数の構成企業群は売上当たりのCO2排出量が36%低いとされています。
パフォーマンスについては、2007年9月末~2018年12月末の約11年間で比較すると、MSCIワールドインデックスとほぼ同様ですが、少なくとも下回ってはいないことは確認できます。
指数の構成企業
2019年3月末現在の構成企業数は406社です。(月次レポートより)
このうち上位10社は次のとおりです。マイクロソフト、P&G、インテル、と続きます。マイクロソフトの構成比が時価ベースでは5%を超えてきています。
国別構成比率は、アメリカ56.5%、日本7.68%、次いでフランス、イギリス、ドイツ、カナダ・・・と続いています。
なお、この投資信託はファンド・オブ・ファンズで、指数構成企業の株式を直接買い付けるわけではありません。
実際には、もともとある、同じ指数に連動するルクセンブルク籍の海外ETF(UBS ETF MSCIワールド・ソーシャリー・レスポンシブルUCITS ETF)への投資を通じて間接的に構成企業に投資します(ここは要注意)。
UBS ETF (LU) MSCI World Socially Responsible UCITS ETF (USD) A-acc
その他のファンド情報
SBI、楽天、マネックス、カブドットコム、松井証券で購入可能、ノーロードです。
信託報酬は、ファンド部分が年率0.2106%、投資対象のETF部分が0.25%程度で、合計年率0.4606%程度。ETF部分もUBSグループでフィーを取っており、海外ETFに投資するFOFsの投信としてはまずまず抑えめなのでしょうか。
決算は年1回、信託期間は無期限です。
まとめ・所感
基本的には、MSCIのESG格付け・スコアリングをベースに、レーティングの高い企業で構成された指数に連動する、先進国株式(含む日本)約400社に投資するインデックスファンドです。ただ、投資対象であるETFに「Socially Responsible」と付いているとおり、社会性やサステナビリティの観点からNGな業種を明確にネガティブ・スクリーニングしているのが特徴です。この点はGPIFの採用したESG指数などとは違い分かりやすいです。
また、UBSのサイトはESGに関するコンテンツも結構充実していて、運用機関としての取り組み姿勢には好感が持てます。
購入時手数料はなく、ネット証券で購入できるので、インデックス投資しているけど社会的に問題のありそうな企業には投資したくない、あるいはESG投資に関心のある人にはとっつきやすいファンドではないでしょうか。
私個人は、ESG投資は、数字や公表情報に表れない部分、見えない部分まで個別の企業をしっかり見ることが基本だと思うので、機械的なスコアリングに基づくパッシブ運用よりも、アクティブ運用が本来中心にあるはずと思っています。
ただ、MSCIなどのインデックスプロバイダーや、UBSのような運用機関が、パッシブ運用でのESG投資を進めることは、企業に対してESGへの取り組みやESG情報の開示を促し、社会全体のサステナビリティ向上という点ではプラスです。公表情報に基づく点数付けで本当にいい会社を選べるのかという議論はありますが、少なくとも、市場全体にまんべんなく投資する普通のパッシブ運用よりは望ましいと思います。
また、「ESGは儲からない」という主張に対する反証として、一定の基準でスクリーニングした「ESG的にいい会社群」のパフォーマンスが、長期的に市場平均を上回るのか、リスクが低減するのかを、バックテストとしてではなく運用成果として検証できるのはメリットではないでしょうか。
まだ純資産は2,000万円ちょっととさみしい状況ですが、今後の動向をフォローします。