セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「いい会社の理念経営塾」新春スペシャル(ローカルキャリアカフェ 川人ゆかりさん&和える 矢島里佳さん)

昨年何度か参加した、「NPO法人いい会社をふやしましょう」の「いい会社の理念経営塾」新春スペシャルに行ってきました。

「地域と伝統からの価値創造」とのテーマで、ゲストはローカルキャリアカフェ代表の川人ゆかりさんと、(株)和える代表取締役の矢島里佳さんでした。

==== 川人ゆかりさんは、大阪を拠点に、都市部の若者に対する地域への移住定住促進サポートや、地域でのキャリア形成支援を行っています。
ローカルキャリアカフェ Facebookページ

具体的には、兵庫の過疎地(新温泉町)での、地元高校生に対する地域キャリア教育、地域おこし協力隊の立ち上げや、熊本の宇城市での「きなしょうが」収穫体験ツアーなど、地域と都市部の若者をマッチングしたり、地域への若者の定着を促進するためのさまざまな活動をしています。

川人さん自身は大阪育ちで、地方出身者ではありません。
第三者が地域でプロジェクトを進める上では、まずは地元の人たちの警戒感を解き、信頼感を得ることが第一と川人さんは言います。
最近は、「地域活性化コンサルタント」と言われる人たちが多く活動していますが、相手の目線に立たず一方的にデータで説明しようとしても決して受け入れられません。

どんなにいいプランやアイディアがあっても、都会からよそ者がビジネスをしに来た、と思われたらダメで、川人さんもまずは話を聴いて仲良くなること、そして若者だけではなく、地元の企業や年配の人たちも巻き込むことを心がけているそうです。

「地域と若者の伴走者として生きる」との講演タイトルのとおり、価値観の異なる人たちをつなぐためには、相手の立場にたったきめ細かい配慮と、粘り強い関係者への働きかけが必要だなと感じました。

また、川人さんは、地域が全てで都会がダメ、と言っているわけではなく、若い人の多様な生き方、選択肢の一つとして、地域でのキャリア移住を提示しているのも大事なポイントだと思います。

ローカルキャリアカフェの活動について参考リンクです。
「道は一つじゃない」 人材紹介会社出身の女性が関西で「多様な働き方」を創出  | オルタナS
脱・都会計画!ローカルワーク大解剖<イベントレポート>(イケダハヤト氏との対談)

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続いて、(株)和えるの矢島里佳さんのパートでした。
矢島さんは、メディアに取り上げられることも多く、お名前は知っていました。

「和える」は、伝統産業の職人たちによる、0~6歳向けの子ども用品を企画販売しています。
和える(aeru)0から6歳の伝統ブランド|株式会社和える

徳島の本藍染をオーガニックコットンに施して作った産着の出産祝いセットや、津軽塗りの「こぼしにくいコップ」など多くの商品があります。デザイン、機能面だけでなく、こどもの生活環境や健康面にも配慮が行き届いています。(職人の手作りなのでお値段は張ります)

「伝統産業」と、「赤ちゃん・こども」の市場は一見とても離れていますが、実は、両者は「産業」であると同時に「教育」「文化」という側面をあわせ持つ共通点があります。このことに気づいた矢島さんはこの2つを組み合わせることに大きな可能性を見出しました。

世界中で評価されている日本の伝統的な技術やデザインに幼少期から接し、体験することを通して、日本の文化や感性を子どもたちに身に付けてもらいたい、という想いで、学生時代に「和える」を立ち上げました。

伝統工芸は、作り手の高齢化と後継者不足が深刻です。しかし、矢島さんは、供給側に目を向けるのではなく、「需要を増やせば、作り手になりたい人も増えるのでは?」と、新しい市場を生み出そうとしています。

矢島さんは、人々がそもそも伝統産業について「知らない」ことが問題で、知ってもらえれば関心を持ってくれる人も多いと感じています。
もともとジャーナリストになりたかった夢があり、今はまさにモノづくりという発信を通じて、「伝統産業」をふつうの「産業」にするためのジャーナリストになろうとしている感覚だそうです。

目黒にオープンした直営店のスタッフに対して、矢島さんが日々伝えている言葉は印象に残りました。
- みんなは「販売員」ではなく「ジャーナリスト」
- お客様に「売る」のではなく「伝える」

また、21世紀は、個人も企業も、「心の豊かさ」と「経済」のバランスを考える時代であり、「和える」は、株式会社というかたちでそれを体現していきたい、というまとめはとても腑に落ちました。

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最後の対談セッションは、大久保寛司さんの進行でした。
大久保寛司さんのファシリテーションはいつも本当に上手だなと思います。ゲストが一番伝えたいキーワードを、自然に引き出します。

川人さんは、ワールドカフェやイベントを通じて地域・地方と都市部の若者をつなぐ、矢島さんはモノづくりを通じて伝統産業と子どもたちをつなぐ、と、それぞれ分野や手法は違います。

しかし、既存のモノ・ヒト・市場を、今までにない発想で組み合わせたり、結びつけたりして、新しい価値を生み出しているところは共通しています。矢島さんも言っていましたが、すでにあらゆる商品やサービスが出尽くしたので、これからの時代は、そうした方向性が起業のひとつのカタチなのでしょう。

あとは、素朴な感想として、二人とも信念と行動力、そして発信力の高さが凄いな、ということです。
自分はこうやって伝えることが精一杯ですが、いい活動をしている人たちを少しばかり応援できればと思って書いています。

次回(3/15)の「いい会社のチカラシンポジウム」では、マザーハウスの山口絵理子さんが登壇予定です。

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