セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「社会的インパクト投資の拡大に向けた提言書」を読みました

「社会的インパクト投資の拡大に向けた提言書」というレポートが公開されています。
まとめたのは、G8社会的インパクト投資タスクフォースの国内諮問委員会です。

社会的インパクト投資を日本で推進するための提言書公開/ G8インパクト投資タスクフォース 日本国内諮問委員会

「社会的インパクト投資タスクフォース」は、世界のさまざまな社会的課題を投資の手法を活用して解決していこうと、2013年のG8サミットでキャメロン英首相が提唱し、各国で発足しています。

日本の委員会には、元東大総長、現三菱総研の理事長小宮山宏さんを委員長に、コモンズ投信の渋澤健さんや、日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆さんなどが入っています。

鵜尾さんは、先日の「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」のパネリストにも来られていて、今回の提言の内容と重なる内容を話されていました。

そもそも、「社会的インパクト投資」とは、
社会課題を解決しながら経済的な利益も同時に生み出す投資行動」と定義されています。

レポートによると、少子高齢化や、地域の衰退、格差拡大などの社会的課題は、政府と市場にまかせているだけでは解決できなくなっており、政府、純粋な市場に属さない第三の領域として、「ソーシャルセクター」が期待されています。


(同レポートより、クリックで拡大)

このようなソーシャルセクターには、NPOや社会的企業、従来の民間企業など、いろいろな組織形態の主体や事業が考えられます。
そこに投資するのが社会的インパクト投資です。

社会的インパクト投資のリターンは、「投資家への経済的リターンに加え、プロジェクトの受益者や社会全体に対する便益」とされています。
経済的リターンと、社会的リターンの双方を追求するので、従来の非営利組織に対する資金提供と、経済的リターンを優先する企業への投資の間に位置するイメージです。


(クリックで拡大)

従来の寄付や補助金中心では、どうしても調達できるお金の量に限界があり、いいモデルでも継続しにくい面がありましたが、そこに投資の考え方を取り込むことで、質、量ともに多様なお金を社会的企業が調達できる環境をつくろうとするものです。
寄付ではなく、リターンを求める投資だからこそ、たくさんのお金が集まりやすくなります。

インパクト投資の実例として、ミュージックセキュリティーズのセキュリテや、三菱商事の復興支援財団などが紹介されています。コモンズ投信も紹介されています(コモンズ投信が社会的インパクト投資と言えるかどうかは微妙な面もありますが、渋澤さんがメンバーなのでよしとしましょう)。

知らなかったのですが、海外では、イギリスのSSXや、カナダのSVXなど、社会的企業が広く資金調達できる、社会的投資市場(証券取引所)もあります。

最近は、テレビで「社会貢献」を前面に出して紹介された鎌倉投信があれだけ多くの反響を集めたぐらいですし、高齢化や地方の問題など、欧米より深刻な面もあるので、きっと海外と同じような取引所のニーズは日本でもあるのではないでしょうか。

社会的インパクト投資を普及させるために、具体的には以下の7項目を提言しています。

1.休眠預金の活用
2.ソーシャル・インパクト・ボンド、ディベロップメント・インパクト・ボンドの導入
3.社会的事業の実施を容易にする法人制度や認証制度の立ち上げ
4.社会的投資減税制度の立ち上げ
5.社会的インパクト評価の浸透
6.受託者責任の明確化
7.個人投資家層の充実

法律や税制を変えないといけない項目も多く、休眠預金の話などは国民的な理解も必要なので、簡単ではありませんが、特に、機関投資家が社会的インパクト投資をしやすくするための「受託者責任の明確化」や、社会的リターンや便益を測るための「社会的インパクト評価の浸透」は大事だと思いました。

私も勉強中ですが、「社会的インパクト投資」の基本的な事柄がわかりやすく書いてあるので、興味ある方は読んでみてはいかがでしょうか。