セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

はじめてのエシカル-人、自然、未来にやさしい暮らしかた(末吉里花さん・著)

末吉里花さんが書き下ろした、エシカルな暮らしの入門本です。末吉さんは、一般社団法人エシカル協会の代表理事として、エシカル消費の普及に向けて活動されています。

5月から8月にかけて受講した「フェアトレード・コンシェルジュ講座」では、とてもお世話になりました。

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エシカルな消費って?

エシカル(倫理的)な消費、というと難しく聞こえますが、分かりやすく言うと、「日々の消費や暮らしを、人や環境や社会に配慮したものにすること」です。

環境汚染、温暖化、資源の枯渇、貧困と格差、児童労働などの人権侵害・・・といった世界の課題と、私たちの消費行動はどこかでつながっています。このことに目を向けて、日々の買い物や生活を少しずつ見直そうという動きが生まれ、広まってきました。これがエシカル消費です。

日々の消費行動が世界を変える

末吉さんはこう書いています。

毎日の買う/買わない選択が、私たちの意思表示なのです。(中略)一人一人の力は小さくても、集まれば大きな可能性が生まれます。つまり、普段の買い物をちょっと見直すだけで、社会や人や環境に大きな影響を与えることができます。』

(はじめに-より)

誰でも毎日スーパーに行ったり、車に乗ったり、服を買ったり、外食したりします。消費は誰にとってもとても身近ですが、マクロで見ればGDPの6割を占めます。

したがって、個人の「どれを買うか、買わないか」というちょっとした選択の積み重ねが、企業や生産者の行動を変えることにつながります。私たち消費者は強い力を持っている、と気づくことは確かに大切です。

ミステリーハンターからエシカルを伝える仕事へ

末吉さんは、大学卒業後、「世界ふしぎ発見!」のレポーター(ミステリーハンター)として、キリマンジャロの氷河が溶け、サハラのオアシスが失われていく姿や、世界の貧困の現状を目の当たりにし、人々の意識や消費行動を根本的に変えなければいけないと思うようになったそうです。

その後、フェアトレードブランド「ピープル・ツリー」の創設者サフィア・ミニーさんとの出会いが転機となり、「エシカルを伝える」活動を始めました。人生は全て意味があることだな、と思います。

日本人はもともと「エシカル」

末吉さんは、日本人は昔からエシカルだったと書いています。
例えば、「おかげさま」「お互いさま」という相手を思いやる発想や、「もったいない」「足るを知る」という思想はとてもエシカル的です。

さらに、企業の社会性を表す、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)という言葉もそうです。「三方よし」に、作り手よし、未来よしを加えた「五方よし」がエシカルの理想だと書いていますが、そう言われると、日本人の文化気質とエシカルは相性がいいと思いませんか?

無理せず身近なところから

エシカルな消費が大事だと分かっても、日々の暮らしを100%変えるのは難しいです。例えばフェアトレードの商品は高めなので、そればかり買うわけにもいきません。

末吉さんは、無理せずできる範囲で、身近なところから続けてみよう、と言います。重たい使命感からではなく、楽しめるぐらいがちょうどいいと思います。

例えば、フェアトレードのチョコレートを買う、オーガニックコットンのTシャツを買う、車をエコカーにしてみる、生産者の顔の見える無農薬野菜を買う、などはどれもそうです。「ものを大事に使う」ことだって当てはまります。

自分もファストファッションの服を結構持っていますが、「このシャツは何でこんなに安いのか?」「誰が、どういう環境で作ったものなのか?」と考えてみることもエシカルの入口です。

本の末尾には、イオンやスタバのような大手から専門店まで、エシカルなブランドやショップのリストがついています。自分の好きなジャンルで商品をいろいろ探してみるのも楽しいです。自分も、例えば、バナナペーパーの名刺や、IKEUCHI ORGANICのオーガニックタオルを使っています。

投資も寄付も消費もつながっている

この本は、エシカルな「消費」を書いていますが、「投資」や「寄付」も、お金の使い途の選択を通じた意思表示であり、同じように社会に大きく影響を与える力を持っています。

渋澤健さんの「滴を大河に」、鬼丸昌也さんの「微力ではあるが無力ではない」という言葉と、次の末吉さんのお父さんの言葉の根底にあるものは同じだと思いました。

自分が持っているお金の1%を社会のために使う。自分が持っている時間の1%を社会のために使う。もし両方とも持っていなければ、自分の心の1%を社会のために使う。

(あとがき-より)

この1%が重なれば、社会は大きく変わっていくでしょう。
優しく勇気づけてくれる、とても素敵な本です。