セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

コムジェスト・アセットマネジメント 高橋庸介社長との対話

先日、コムジェスト・アセットマネジメントのオフィスで高橋庸介社長のお話を聞いてきました。

投資を楽しむ」のまろさんにお誘い頂きました。
他に、竹川美奈子さんrennyさんまっき~さんも参加。

コムジェストは、フランスに本拠を置く独立系運用会社です。
セゾン投信の「セゾン資産形成の達人ファンド」には、欧州株、エマージング株、日本株の3つのファンドが組み入れられています



高橋さんの話を聞くのは二回目です。

(過去記事)
セゾン投信の「セゾン資産形成の達人ファンド・コムジェストを徹底分析!~ニッポン編~」

今回は、少人数で、コムジェストの運用理念と運用プロセスをより詳しくお聞きしました。

運用の中心となる考え方は、創業以来30年間一貫して追求している「クオリティ・グロース」です。
クオリティ・グロースとは、「今後5年以上にわたって10%以上のEPS成長が見込める企業」のこと。長期的には、株価は企業の成長に収れんするはずとの信念がベースにあります。

徹底的な調査で、持続的に成長できる確度の高い企業を見出します。
確信度の高い企業に厳選投資し、指数に一切とらわれない(アンコンストレインドな)運用です。同社のファンドのアクティブシェアは常時9割程度を保っています。

●「クオリティ・グロース」を見出す組織の力

そのような骨太なアクティブ運用ができる理由は、コムジェストが創業以来培ってきた組織文化にあります。

それは、徹底的なチーム運用と、社員を大事にする企業文化です。
コムジェストは、スターマネージャーに頼るリスクを減らすため、組織内での情報とノウハウの共有をグローバルに行っています。

大手の運用会社で、米国株と日本株のチームが日常的にやり取りすることはまず有り得ませんが、コムジェストでは普通です。

コムジェストは、グループ全体で運用担当者は40人ちょっとです。組織の規模が小さいので、例えばファーストリテイリングとインディテックス、H&M・・・を、深いレベルでグローバルに比較分析でき、本当に強いビジネスモデルを持つ企業を見出せます。

また、新規組入や全売却は、チーム全員の一致が必要な合議制を取っています。競争力や長期的な利益予測を徹底的に議論し、みんなが納得できなければ意思決定しません。

なので、例えば台湾のTSMCや、フランスのエシロールのように、調査に5年以上かけるのも珍しくありません。本当に確度の高いグロース銘柄をじっくりと厳選できるプロセスは、このような組織の力がベースになっています。
※各ファンドの組入銘柄は30~50程度。

複数の外資系投信会社を経験してきた高橋社長も、業績のプレッシャーをこれほどかけない会社は初だそうです。また、金融の世界では珍しく社員の離職率も低いです。
外資っぽくない、旧き善き家族経営に根差した「いい日本企業」的な香りを感じました。

●コムジェストのESGインテグレーション

組織の強さと、もう一つ、コムジェストの運用プロセスの特徴としてESGがあります。
持続的に成長できる企業を見出す上では、ESG要因の分析は必須です。コムジェストは、「ESG」という言葉が広がる以前から、ESGインテグレーションを実践してきました。

今回、セゾンのセミナーの時よりもより詳しく、ESG評価をどう運用に反映しているか説明頂きました。

第一段階として、約150社の投資ユニバース(候補先)選定の段階で、ネガティブスクリーニングを行っています。クラスター爆弾関連企業などに代表される非人道的活動を行う企業は、この時点で除外されます。

第二段階として、ユニバースからポートフォリオを構築する段階です。
外部ベンダーのESGスコアや、企業の開示情報とともに、ESGアナリストと担当アナリストが一緒に企業を取材して、サステナビリティの要素を評価します。
それらを基にしたESGレーティングを、各社の株価算定時の割引率に反映します。具体的な数字の話もありましたが、ESG的に優れた企業からダメな企業までを4段階に分けて、割引率の設定にかなりのストレスをかけているのが分かりました。

第三段階は、組入後のモニタリングや対話です。組入時のESG評価が低い企業であっても、その後のエンゲージメントで改善を促したり、情報開示について助言したりもします。

コムジェストでは、ESGをリスク低減要因としてだけでなく、ESG要因が改善することによるリターンの源泉としてよりポジティブに見ています。
古くからESGを取り入れている実例として参考になりました。


他にもたくさんあって書ききれませんが、聞けば聞くほど「骨太なアクティブ運用」を実践している会社だと思いました。
ほぼインデックスファンドのなんちゃってアクティブファンドを並べている大手運用会社にも、ぜひコムジェストの考えを学んでもらいたいものです。

ちなみに、コムジェストとしての公募投信の設定は、コストや体制の問題、運用のクオリティに影響する面もあるので、現時点ではなかなか難しそうです。

セゾン投信経由であっても、運用内容をもう少し詳しく開示してもらえるといいのでは、という話も出ました。
ぜひセゾン投信側でも、コムジェストはじめ、世界のいい運用会社を厳選しているのですから、検討してもらいたいです。