セルフ・リライアンスという生き方

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地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実 【書評】

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地球温暖化が進んだ先に何があるのか。デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏のショッキングな著作です。
江守正多さんの解説を借りれば、「気候変動によるリアルな未来図を提示した警告の書」です。

さまざまな社会の課題の中で、気候変動や温暖化の問題ほど「大事だとは思うけど、話が大きすぎて自分がどうこうできるものではない」と考えがちな問題もないのはないでしょうか。

その理由は、この言葉に集約されていると思います。

温暖化が日々の生活を破壊する威力を、ほんとうには理解できていないのだ。(p17)

少しずつ、確実に状況は悪化していて、ゆくゆく破滅的な事態に至る可能性があるのに、毎日の生活を変えることができない。水害が多発し、40℃近い日が続くというニュースを見ても、その根本的な原因まで目を向けようとしない。

自分もそんな普通の人間の一人です。
そんな普通の人でも、この本を読めば、「気候崩壊」がこのまま進んだ場合、遠くない将来、人間にとってかなり厳しい世界が待ち受けていることが理解できます。

温暖化というと、「平均気温が2℃ぐらい上がる」「海面が上昇する」という直接的な影響を思い浮かべますが、そこから先のことにはあまり想像力が及びません。本書では、気候変動によって生み出される深刻なリスクを、単に環境の問題としてだけでなく、経済社会への影響も含めて明らかにしています。これらは相互に関連しており、かつ不可逆的です。

・旱魃と食糧不足
・都市水没と大量の気候難民発生
・「史上最悪」レベルの自然災害の日常化
・水不足
・海水温上昇による「海の死」
・大気汚染
・感染症拡大
・経済停滞と格差拡大
・紛争増加
・・・

一通り読み終わると、もはや、経済システムや人々の生き方を根本的に変えない限り温暖化は止められない、そういう絶望感に襲われます。

経済史の考え方で、資本主義は化石燃料とともに発展した、という「化石資本主義」というものがあるそうです。皮肉ですが、その発展を支えてきた化石燃料から脱却できないことで、資本主義自体が滅びてしまうのかもしれません。

ただ、希望が全くないわけではありません。
本書では、具体的な提案はあまりされていませんが、例えばこういう記述があります。

税制を使って化石燃料を急いで廃止する。農業のやりかたを変え、牛肉や乳製品に偏った食生活から脱する。グリーンエネルギーと二酸化炭素回収への公共投資に力を入れるなど、やれることはたくさんある。(p260)

また、次のような記述もあります。

未来の気候を決めるのは、人知のおよばない何かではなく人間の活動だ。この本に登場する気候シナリオに、「らしい」「おそらく」「だろう」という留保がつくのもそれゆえなのである。(p252)

人々の行動次第で未来は変わる。本書では気候変動に対する私たちの当事者意識や責任について繰り返し指摘しています。

日常に目を向けてみても、水害や酷暑を伝えるメディアは、せいぜい「これも温暖化の影響でしょうか。」と第三者的にコメントするだけで、「私たちひとりひとりが今すぐ行動を変える必要があります。」とは決して言いません。それは、気候変動が自分達とは関係ない災厄のように考えているからで、過去の行動や未来の気候に対する責任という視点は欠如しています。

ウェルズ氏によれば、温暖化は人間の行動の結果であり、誰かが魔法のような技術で解決してくれるものではありません。

「ファクトフルネス」が指摘したように、世界の人たちの生活水準は長期的に見ると着実に改善しています。しかし、「今までずっとそうだったように、人間の向上心と技術の進歩によって、世界は必ずよくなっていく」という考え方は気候変動には当てはまらないのです。

自分も含む普通の人に求められているのは、気候変動に関する世界の事象に関心を持ち、想像力をもって受け止めること、そして、日々の生活の中でできることを少しずつ続けることだと感じました。それが、気候変動を他人事にしない第一歩だと思います。

危機を煽るだけでなく、「あなたができることは何か?」と問いかけてくれる本でした。