セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

投資先の統合報告書を読む(ダイキン工業)

株式市場が冴えませんが、こういう時はじっくりと投資先企業の理解を深めるいい機会でもあると思います。

投資先の中から、『GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」』にも選ばれている、ダイキン工業の最新の統合報告書を読んでみました。

ダイキングループ『統合報告書2023』を発行 | ニュースリリース | ダイキン工業株式会社

2019年に、コモンズ投信主催のダイキンとの対話イベントに参加したことがあります。当時はまだ「サステナビリティレポート」でした。(2021年度から統合報告書を発行)

ダイキンはどんな会社か?

一番最初の見開きで、会社を簡潔に表現していて好感が持てました。

・世界で唯一、空調と冷媒の両方を手掛ける(事業の強み)
・目標に向かって挑戦し、徹底した実行力を発揮する(企業文化)

統合報告書は、メインパートの「価値創造を実現する戦略」、それを支えるガバナンス、各事業の概況と見通し、という流れになっています。

冒頭の十河社長のメッセージが全体のサマリーになっていて、まずは全体が理解できるのがいいですね。

過去20年では規模拡大と収益性向上を両立してきました。

価値創造プロセス

優位性とビジネスモデル、重要課題(マテリアリティ)と戦略経営計画(FUSION25)の関連性、中期の財務目標までの流れがすんなりと頭に入ってきます。

「地球」「都市」「人」に対して価値創造する視点は分かりやすいですね。

積み上げてきた強み

1.独自の空調コア技術3つ・・・ヒートポンプ、インバータ、冷媒制御
2.人を基軸におく経営・・・企業文化
3.グローバルな販売網・・・自前で構築した販売・サービスネットワーク

独自のビジネスモデル

・垂直統合生産(基幹部品の内製化)
・市場最寄化生産(地産地消)
・四位一体の商品開発(生産、販売、研究、調達)
・強固な販売網(顧客との関係性)

各市場で調達から販売までを簡潔する「地産地消」は、空調という製品の特性から非常に大事だと思いました。

空調事業については、国や地域によって気候や建物の様式、生活スタイルが異なり、製品ニーズはさまざまです。また、各国で製品の規格や省エネ規制も異なることから、その地域の特性に応じた製品の開発・生産・サービス・販売体制の構築が欠かせません。ダイキンは、市場に近いところに生産拠点を構える「地産地消」を基本戦略としており、グローバル5極で地域自立型の開発・生産~販売・サービスのサプライチェーンを築いてきました。調達についても、グローバル集中購買ではなく地産地消のために地域主体の調達体制の構築を進めています。

柱はサステナビリティ

ダイキンが目指す価値創造=「環境負荷を低減しながら、人と空間を健康で快適にする新しい価値を提供します。」とある通り、全体を通した一番のメッセージは、やはりサステナビリティと環境対応です。

世界の空調需要増加に対応しながら、同時に脱炭素に貢献することがダイキンの最重要課題であり、かつ競争優位性を支える柱だと伝わってきました。

最近も記事になっていますが、ヨーロッパでのヒートポンプ暖房のシェア拡大は当面のポイントですね。

ガバナンスの中では、分野ごとに「○」を付けるよくあるスキルマトリックスではなく、役員の特性を、文章で説明しているのがよかったです。

 

統合報告書は、その会社が何を自社の重要課題と考え、どんなプロセスで課題解決をしながら価値創造を行い、財務成果を上げるのか、一連の流れが分かることが大事だと思います。ダイキンのレポートはその部分が分かりやすく、よくできています。

まだざっと読んだだけですが、統合報告書でまず全体像を把握してから、関心のある部分を掘り下げていく、というのも企業理解を深めるやり方としていいのかなと思います。