セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「おおぶね年次総会2023」にオンライン参加

本業多忙につき、ひさびさのブログ更新です。

12/9に、農林中金バリューインベストメンツの「おおぶね」年次総会が開催されました。

今年は、投資先である味の素の「クライアント・イノベーション・センター」の見学会企画でした。あいにくリアル参加の抽選には外れてしまったので、「こぶね会」メンバーと一緒に、プログラムの一部をカラオケボックスで視聴しました。 

前半は「おおぶね」の運用報告、後半は味の素への投資仮説の解説と、藤江社長とCIO奥野一成さんの対談でした。

味の素の競争優位性

味の素は、NVICが古くから投資している企業の1社です。
セグメントは、調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケア等の三本柱。事業利益の約6割は調味料・食品が、残りをヘルスケア等が稼いでいます。

NVICが考える、味の素の競争優位性です。

・「価値とコストの非対称性」。調味料は、調理全体に占めるコストは低いが、味を決定づける重要な要素である(価値は大きい)ため、スイッチングコストが高い。
・味は習慣化し、刷り込まれるため、先行者がシェアを高めやすい。日本だけでなく東南アジアで圧倒的シェア。
・粉精製の技術力(結晶が均一、真っ白な色)
・現地市場に徹底的に根差したマーケティング。家庭の台所にまで入り込んでその国の味を研究。

1番目の「価値とコストの非対称性」は、おおぶねの分析視点の一つです。香料(ジボダン)などでも同じ話が出てきますね。

4番目の「現地市場に根付く力」は、味の素の企業文化とも言えるのではないでしょうか。製造業でありつつ商社のような会社だと感じます。

この本で取り上げられているそうです。

『地球行商人』を書き終えて思うのは、お世辞抜きの、味の素という企業の凄さである。うま味調味料を一袋一袋、地を這うように売り、味を根付かせるという世界に類のないスタイルを貫き、かつそれを日本人幹部の監督なしで、現地社員だけでできる体制を構築している。

また、調味料とは別の強みを持つ製品として、ABF(味の素ビルドアップフィルム)の解説もありました。

調味料の副産物が、いまやPC向けの半導体基板の層間絶縁材料で圧倒的高シェアを持つデファクトとなっています。チップの製造プロセスはABF無しには成り立たず、強い競争優位を持つ製品です。

ABF | イノベーションストーリー | 研究開発 | 味の素グループ

事業ポートフォリオとキャピタルアロケーション

競争優位を長期に渡り確保し続けられるかどうかは、企業のキャピタルアロケーションの巧拙が大きく関わります。味の素の強みは、ビジネスそのものの競争力に加えて、事業ごとの競争優位性を的確にとらえた上でのダイナミックな経営資源配分にあると思います。

NVICは、味の素との間で、事業ポートフォリオについて継続的に対話をしてきました。
各事業を、「競争優位性」と「収益性」でマッピングし、時間軸を加えた動的な分析を行い、議論を深めています。

冷凍食品事業の低収益が気になりましたが、同じ「北米向け冷食事業」であっても、ひとくくりにせず、強いアジアン系と弱い欧米食系に分けて考えている部分などは、他社を見る際にも参考になると思いました。

※書籍「資本コスト経営」の中で、この対話の模様が詳しく紹介されています。投資家と企業が、長期視点で、資本コスト(あるいはROIC)をベースにして事業ポートフォリオについてエンゲージメントしている好例で、非常に参考になります。

藤江社長からも、ROICと競争優位性を軸にした中長期の事業ポートフォリオ構築という視点は色濃かったです。
現在の調味料・食品:ヘルスケア等の事業利益比率(2:1)を、2030年には1:1にもっていくことを目指しています。

(「中期ASV経営 2030ロードマップ」)

自己満足ではない、真の競争優位性を追求するため、企業価値向上のために外部のプロ人材を招いた「バリュー・クリエーション・アドバイザリー・ボード」も設置しました。

また、人的資本や無形資産の重要性も強く語られていました。藤江社長には気さくに話して頂いて、親しみがわきました。

今回、リアル参加は叶いませんでしたが、NVICの投資哲学と、味の素の強みを理解する一助になりましたね。
味の素は直接保有はしていませんが、コモンズ投信の味の素関連のイベントにも2回参加したことがあり、引き続きフォローしたい会社です。

企業さん側の受け入れ都合もあると思いますが、ぜひ次回はリアルの参加人数を増やすご検討頂ければ有難いです。