セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

サステナブル経営とコーポレートガバナンスの進化(松田千恵子・著)

ESGの中で一番分かりにくいのがG=ガバナンス、だと思います。
Eは環境にいいこと、Sは人や社会にいいこと、と何となく言えても、ガバナンスについてきちんと説明できる人は少ないのではないのでしょうか。

著者の松田さんは書いています。

「マネジメントとガバナンスは合わせ鏡のようなものです。」

「ガバナンスが指し示す様々な要素は、これからの荒波をくぐり抜けるために、マネジメントが考えなければいけない重要ポイントなのではないでしょうか。」

この言葉のとおり、経営やマネジメントの観点から、ガバナンスとは何か、企業に何が求められているのか、解き明かしてくれる本です。

具体的には、2021年のコーポレート・ガバナンスコードの再改訂を踏まえ、企業に求められる以下の5つの「ガバナンスの進化」について述べています。

・プライム市場における高度なガバナンス
・モニタリング・ボードの実効性
・サステナブルな事業の将来像を描けるか
・資本コストを踏まえた事業ポートフォリオマネジメント
・人的資本への注力が将来を決める

ガバナンスの高度化は、マネジメントの高度化そのものであり、ガバナンスが企業価値向上と密接に結びついていることがよく理解できました。

ESGというと、EとSとGが並列のように見えますが、GがしっかりしていなければEもSもありません。ガバナンスはサステナビリティを支える土台となります。

また、日本では、かつてのメインバンク中心のガバナンスの名残があり、ガバナンス次第で大きく変貌する可能性を持った企業が多く存在します。「稼ぐ力」の重要性が指摘され、ROEやROICに光が当たったのもこの10年弱の話です。投資家目線でもガバナンスを深く理解することは大切です。

松田さんの文章はズバッと斬るフレーズが多く、思わず頷いてしまいます。内容は専門的ですが、読みやすいし面白いです。
「ESGはCSRにあらず、まずはきちんと儲けよ」
「スキルマトリックスはスキル自慢の表ではない」
「下手な統合報告書なら作らない方がまし」

主に企業の担当者向けですが、ガバナンスについてしっかり理解したい個人投資家さんにもお勧めできる本です。