セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

セゾン投信の対話ミーティング

先日の中野会長の退任と経営体制の変更を受けて、セゾン投信が全国で受益者との対話イベントを開催しています。東京の部に参加しました。

園部社長より、今回の退任の経緯と今後のセゾン投信の運営について詳しく説明の後、質疑応答がありました。

以前書いた記事では、園部さんの日経CNBC出演時のコメントを取り上げましたが、より詳しく聞けたので残しておきます。(説明と質疑応答が入り乱れているので分けずに書きます)

冒頭、園部さんより、大前提として、中野さん退任に関するメディアの報道は、セゾン投信に取材をしておらず憶測が多い、とかなり強い調子での発言がありました。

セゾン投信が今後も変えないこと

・経営方針、運用方針、販売方針の3つは変わらない。

・ファンドの商品性は投資信託約款で定められている。お客様に不利益のある変更はそもそもできない。運用も、瀬下さん(セゾン・グローバルバランスファンド、セゾン資産形成の達人ファンド)、山本さん(セゾン共創日本ファンド)が引き続き変わらず行う。

・報道では販売会社を増やすのでは、と言われているが、そのつもりもない。この3点は株主とも共有している。

セゾン投信が今後変えたいこと

大きく2つを変える。それによって「健全な成長」を目指す。

1.長期資産形成を多様な方法で世の中に伝えていく。セゾン投信をもっと多くの人に認知させていく。(販売会社を増やす、という意味ではない。)
今までは対面とアナログの発信が中心だった。若い人にアプローチするため、デジタル(ネット、アプリなど)の多様な手段を使っていく。

2.お客様の不便を解消し利便性を向上する。例えば、今はどの金融機関でも当たり前のオンラインでの口座開設や、資産状況が把握できるアプリ導入など。

では中野さんの退任理由は何なのか?

・報道されているような「直販」と「販路拡大」の対立はないと考える。中野さんも新会社では販売会社を使うと言っている。

・株主と中野さんのコミュニケーションが希薄で相互理解がなかった。ここ数年、新規の口座開設、特に若い層の開設が減少していた。中野さんは対面のセミナーにこだわり、オンラインやアプリなどでの集客には後ろ向きだった。親会社としては、多様な発信が必要と考え、中野さんにも戦略を出してほしかったがその答えはなかった。

・今後も中野さんはセゾン投信の顧問などの立場で従来の対面での発信を行い、事業運営は園部さんが行うという役割分担を提案したがそれも受け容れられなかった。

親会社(クレディセゾン)との関係

(園部さんとしては)株主はとても自由にやらせてくれていると思っている。積立投資はビジネスとして儲からないが、セゾン投信の好きにやらせてきた。5回増資し、単年度黒字になったのは8年後、累損解消は去年。自分が株主だったらここまでできない。なのに、セゾンカード会員への案内にも中野さんは前向きではなかった。そもそも、セゾン投信設立時の届出書に、セゾンカード会員に長期資産形成を届けることが設立目的、と書いてある。

販売会社は増やすのか?

・メディアの憶測。一般的には販売手数料は販売会社が決めるが、セゾン投信は約款で「販売手数料を取らない」ことになっている。なので、セゾン投信のファンドを扱っても販売会社は手数料を取れない。なので販売手数料目的の金融機関はそもそも扱う意味がない。

・従来通り、社内のチェックリストを満たす販社だけと交渉する方針。どの販社と組むかはセゾン投信が決めることであり、親会社の意向で販売会社を増やすということはない。

資金の出入りが大きくなってパフォーマンスに悪影響があるのでは?

・グローバルバランスファンド、達人ファンド、共創日本ファンドとも、投資対象の市場規模、流動性が十分に大きい。資金流出入があっても、ポートフォリオマネージャーの望むPFが維持できるので影響ない。

→ (これは私の見解)ファンドそのもののパフォーマンスが影響を受けないとしても、セゾン投信へのロイヤリティの低い顧客が増えて、相場に応じた資金流出入が激しくなると、高値賀いや安値売りする人が増え、セゾン投信が重視してきたインベスターリターンが悪化する可能性はあると思います。

新NISA口座獲得についてどう考えるか

・長期積立投資はもはやどの金融機関も言っているので、セゾン投信のファンドが他とどう違うのかを伝えていかないといけない。

・商品数が少ないのはメリットでもある。品揃えが少なくても、一つのファンドで国際分散投資されていればよい。個別株が買えない点については、個別株は特定口座との、投信はNISAとの相性がいいと考える。長期資産形成においては、含み損が出て不安になる局面もある。身近なところに相談に乗ってくれるパートナーがいることが大事。ネット証券ではそれはできない。

中野さんの退任に伴う顧客の解約は?

新規契約者はほぼ変わっていない。積立を止める人は多少出たのと、6月は解約が従来の2倍ぐらいになった。ただし、7月、8月の資金流入は増えている。

最終的には会社は株主のもの。親会社の方針が今後変わる可能性もあるのでは?

・株主の意向で運用会社の経営が左右されるのは金融庁も問題視している。ただ、これは、野村證券と野村アセットなどの関係。クレディセゾンは金融商品販売会社ではないので、親会社が売りたい商品を子会社に作らせるという構造にはならない。

・クレディセゾンにとってセゾン投信は小さい子会社であり、無理して利益を出せとは言われていない。それよりも長期投資の考え方を広めなさいと言われている。なので心配はない。

【所感】

予定は1時間でしたが、約1時間半、質問が尽きるまで回答して頂き、誠実な姿勢は感じました。セゾン投信とクレディセゾン側の見解を直接園部さんから詳しく聞けてよかったと思います。

会社を持続的に成長させるには、セゾン投信の認知度を高め、若年層の顧客を増やす必要があり、そのための中野さんの解任であったという言い分も理解しました。

ただし、全体として、クレディセゾンの考えを代弁する立場からの中野さん批判が多く、共感はできませんでした。

もちろん、中野さんが、従来型の対面による普及啓蒙にこだわり、経営者として、顧客拡大に向けた将来戦略を打ち出せなかった、と言うのはその通りなのかもしれません。このままではセゾン投信が尻すぼみという親会社や園部さんの危機感もよく分かります。

ただ、16年間会社を育ててきた中野さんを結果的にあのような形で解任した事実は変わりませんし、その点では今のセゾン投信に対する不信感や何ともいえないモヤモヤは残り続けると思います。

一方で、長らく積み立ててきた、達人ファンドの運用自体は変わらない可能性が高いことも確認できました。

ですので、上記の記事で書いた対応には変更ありません。すなわち、達人ファンドへの投資割合は減らしますが、投資は継続します。

・直販口座の達人ファンドは全解約(すでに解約済で残高はゼロ、積立はせず)
・iDeCoでの達人ファンドの積立は積立額を減らして継続

一言で言うと、中野さんは理想主義、園部さんは現実主義であり、その価値観の違いは大きかったのかな、という気がします。中野さんも、もう少し親会社とコミュニケーションして歩み寄れる余地はなかったのかと思うと残念です。(それをしない頑固な方だからこそ、ここまでセゾン投信のファンが増えたのだとも思いますが。)

新NISA開始を控え、時代に合わせて運用会社も変わっていく必要があるのは確かだと思います。ただ、中野さんがいたからこそセゾン投信と関わりを持てた自分としては、今後セゾン投信がどうやら「普通の運用会社」になっていくのは寂しくもあります。

達人ファンドは引き続き積み立てるので、今後も一受益者としてお付き合いさせて頂きます。