セゾン投信の「セゾン共創日本ファンド」の月次セミナー(共創日本会議)に今月も参加しました。
大きく2つのパートでした。
1.投資先企業紹介(中外製薬)
2.長期投資家のための株式投資読本(3回目)
前回記事はこちら。
投資先企業紹介(中外製薬)
アナリストの大月さんより、中外製薬のビジネスモデルと強みについて、1時間かけて詳しい解説でした。
・高分子医薬品(抗体医薬品)に強み
- がんや自己免疫疾患が得意領域
- 抗体医薬品の技術力の高さ
「中外製薬は、独自の抗体エンジニアリング技術の確立をはじめ、低分子を含む多様な創薬モダリティでの研究基盤を背景とした、高い創薬力が世界的に評価されています。また、疾患バイオロジーへの深い理解に努め、抗体医薬品の技術研究や遺伝子解析に注力。国内抗体医薬品市場ではNo.1のプレゼンスを誇っています。」
中外製薬「5つの強み」|会社情報|中外製薬
・ロシュとの戦略的協業による創薬力の高さ
- 株式の6割以上をロシュが保有しているが、独立性が高くガバナンスも良好
- 研究成果をグループ(ロシュ、中外、ジェネンテック)でグローバルに共有し開発力を高めている
3社は欧州、日本、アメリカなので、24時間研究し続けているのは強い、という点や、製薬企業への投資は、キャッシュフローの評価としてはすでに上市されている薬の売上がベースになる一方で、将来いい薬をどれだけ創れるかという「未来」を評価する必要があり、その点で中外製薬の開発力は魅力的との話がありました。また、今後の有望分野として中分子技術に着目しているとのこと。
近年の中外製薬は、売上高、営業利益、EPS、ROEなど全て長期的に増加/向上傾向です。特にここ5年程度の伸びが大きいです。(バフェット・コードさんより業績サマリー)
中外製薬の業績・財務 - 4519 / プライム / 医薬品 | バフェット・コード
技術的な話まで詳しく説明してくれるのはこのファンドの特長だと思います。とはいえ抗体の技術は素人には難しいので復習しています。バイスペシフィック抗体、スイッチ抗体、リサイクリング抗体、スイーピング抗体など。
長期投資家のための株式投資読本
ファンドマネージャー山本潤さんの長期投資講座。3回目は「よい経営とは?」という大きなテーマでした。
・経営改善余地が大きい日本企業
日本企業は自己資本比率が高すぎる(現金をため込みすぎ)。余った資金を新規事業や人材育成、商品開発に生かすことは企業の社会的責任なのに果たしていない。
・日本株の平均的なリターン(ざっくり):益利回りが目安
配当利回り2% + 成長率5% = 総合リターン7%(益利回り)
益利回り = EPS ÷ 株価(PERの逆数)→ 益利回り7%ならPER14倍程度
EPS = 配当 + 内部留保 なので、
益利回り= 配当利回り(インカムゲイン)+(内部留保÷株価)キャピタルゲイン
・内部留保は、新規投資に回すか、回せないなら自社株買いか配当として投資家に返すべき。内部留保がたまると資本効率(ROE)は下がる。脱炭素をはじめ、企業はやらなければいけないことがたくさんあるはず。現金をためこんでいる場合ではない。
・売上を伸ばす企業だけが成長企業ではない。売上が一定でも、経営を改革し、資本効率(ROE)を上げれば成長する。だからガバナンスとエンゲージメントが重要。(NTTを例に)
・よい経営とは・・
「何があっても赤字を出さない経営」
「良質な資源を安い時期に買う経営」
・3年連続黒字なら「1+1+1=3」になる。しかし2年目が赤字だと「1-1+1=1」にしかならない。この差は非常に大きい。
・良い会社は「良質な資源を安い時期に買う」
(電気機器2社、化学2社のリーマンショック前後の比較を例に)
長期的に黒字を出し続けている企業は、不況時にこそ、優秀な人材確保やM&A、設備投資、研究開発を積極的に行い、次の好況時に備える。一方、赤字を出す企業は、不況時にリストラをし、設備を売却し、設備投資や研究開発も絞ってしまう。悪い時こそ良質な資源を安く手に入れるチャンスととらえ行動できるかどうかが、競争力や成長性の大きな差となって現れる。
その他、質疑応答より。
・エンゲージメントの具体例は?
- 親子上場している製造業に対して、少数株主保護の点から利益相反について改善を求めた例などが紹介。
・買付の方法は?
- 基本的には均等ポートフォリオだが、厳密に細かくスライスしたりリバランスしているわけではない。売られ過ぎと思われる企業から相対的に多めに購入する。
山本さんの話は、基本的かつ大事な論点が多く勉強になります。ざっくばらんなトークで、具体的な企業名などオフレコも多いので、生のお話を聴きたい方はリアルタイム参加をお勧めします。