11/25に開催された、ひふみ投信の運用報告会(東京会場・午後の部)に参加しました。
2013年頃までひふみプラスを持っていた時期がありましたが、その後数年のブランクを経て、最近直販の方の受益者になり、報告会は初でした。
最近の顧客急増を受けて、初めての参加者も多く、日本教育会館のホールが埋まる盛況ぶり。
前半は直近決算期の運用報告と、今後の運用方針についての説明。後半は、投資先であるほぼ日の糸井重里さんをゲストに、藤野英人さんとのトークセッションでした。
ひふみ投信第9期・ひふみプラス第6期の振り返り
何と言っても運用資産残高の大幅な伸びが目立ちます。直近ではひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金合計で約4,800億に達しました。
特に、2月のカンブリア宮殿放送以降の、ひふみプラスの伸びは凄まじく、毎月100~200億円単位の純流入があり、ひふみプラス単独で3,700億円以上に達しています。(ひふみ投信も1,000億を超えてきています)。
ファンド規模は急激に大きくなりましたが、パフォーマンスも堅調です。9期(2016/10/2~2017/10/1)のリターンは以下です。
ひふみ投信 +37.4%
配当込TOPIX +29.2%
今期は、ひふみの特徴が凝縮された1年だった、との話がありました。
今期初め(2016年10月)から2016年12月末までのいわゆるトランプ相場の時期は、大型株中心の市況で、指数に置いていかれた一方、その後緩やかな上昇となった年明け以降は、4月の下落局面からの回復も早く、着実に指数を上回りました。
時価総額の大きい企業が牽引する「○○相場」には弱いですが、マーケットが停滞 or 緩やかに上がる局面ではひふみは強いです。
また、「○○ショック」の時は全体と同じく下がりますが、相場が落ち着き、会社の価値に再び人々の目が向き出す回復時に力を発揮します。
小さいリスクでシャープレシオを高める(「守りながらふやす」)のがひふみのポリシーです。モーニングスターのデータによると、5年の標準偏差は14.56で同一カテゴリー51本中6位、シャープレシオは1.93で51本中13位となっています。
9期の分配金はありません。
実質コストは1.358%、売買高比率は1.91でした。前期の1.359%、1.94とほぼ同じです。
なお、今期末の組入企業数は185社で、前期末の123社から大きく増えました。詳しくは先日開示された運用報告書をご参照。
今後のひふみの運用方針
・半導体業界には引き続き着目
世界的な景気回復局面が当面続くと見込んでいます。特に活況なのは半導体業界です。PC、スマホなど従来の需要に加えて、車載、IoT関連が急速に伸びてきています。これらに必要な電子部品や材料のサプライヤーとして日本の製造業は欠かせない存在なので、まだまだ優位性があるとの見方です。
今期のパフォーマンスに貢献した企業として、ダイフク、山一電機、アルバック、スミダコーポレーション等の関連銘柄が紹介されました。
・米国株への投資開始
今期の大きなトピックです。既にあちこちで説明されていますが、日本の時価総額上位銘柄と比較して圧倒的に高い、米国大型株の成長(経営者も若い)を取り込むためです。海外の調査に費用を十分かけられるほど、ファンドサイズが大きくなったことも背景にあります。
海外の調査を通じて、米国企業の日本企業に対するニーズのありかや、日本企業の強みを認識することができるので、日本株への投資の点でも、他との差別化になると考えています。来年以降は、アメリカを中心に新興国へも調査範囲を広げたいとのことでした。
・「上場ベンチャー株投資」という考え方
時価総額が100億円~300億円に満たないような、IPO間もないベンチャーに積極的に投資していく方針です。ライバルの機関投資家が少なくチャンスが大きいうえ、小さい段階から長期で保有することにより、社会に貢献できるポテンシャルを持つ企業を資金面で支え、将来的に受益者に大きなリターンを返せる可能性があります。
テラを初め、ベンチャーに対する第三者割当増資の引受がこの考え方の実践です。ファンド規模が大きくなり、リスクを取れるようになったのも要因のひとつです。私たちのお金と社会をつなぐ投資信託として、重要な取り組みだと思います。
【対談】ほぼ日・糸井重里さん × 藤野英人さん
後半は、投資先である「ほぼ日」の糸井重里氏と藤野さんの対談。糸井さんは、翌日に第一回の株主総会を控えての登壇でした。
※東京の運用報告会は午前と午後の2部制。午前のハーツユナイテッドの玉塚元一さんは、9月の鎌倉投信の受益者総会で詳しく話を聴けていたので、糸井さんの方にしました。
「成長」をテーマに、短い時間でしたが、ひふみ投信がほぼ日に投資した理由、糸井さんと藤野さんの共感ポイントが伝わってきました。
(かなり遠目でこれが限界)
(糸井さん)
・ほぼ日にとって会社は「船」、社員は「乗組員」。従来の組織の三角形のヒエラルキーを倒すと、フラットな船のかたちになる。船の中にはいろんな仕事があり、どの仕事も船が進むために欠かせない役割。乗組員みんなが目指す方向を共有し、助け合いながら進んでいく。
・上場して以降「成長戦略」を聞かれることが多いが、過度な成長を求めているわけではない。成長は目的ではなく、結果として成長していけばいいと思っている。
・ほぼ日の行動指針は「やさしく、つよく、おもしろく」。誰かが困っているときに呼んでもらえるような会社でありたい。そのためには、ただの「素敵な中小企業」ではなく、誰かの助けになれるだけの力を付けることが必要。
・先日の六本木ヒルズの「生活のたのしみ展」でアルバイトスタッフを募集したら、50人のところ、素晴らしい人ばかり集まり150人も採用した。乗組員に負けないぐらいほぼ日を理解している人がこんなに増えたのがうれしかった。夢への手伝い方は、乗組員として、株主として、ほぼ日の読者、顧客として・・・と様々な関わり方がある。
(藤野さん)
・ほぼ日を訪問した時の印象は、乗組員(社員)がみんな本当に仕事を楽しんでいて、キラキラしていたこと。仕事と遊びとの区別がない感じで、昔、スタートトゥディを訪れた時のことを思い出した。
・投資したのはほぼ日が好きだから?趣味で投資したのか?と聞かれるが全く違う。ほぼ日はスケールを求めていないが、いい乗組員が楽しく仕事をしていれば、結果的に成長すると思っている。
・ほぼ日は、「手帳を売っている会社」ではない。お客さんと一体になって、ワクワクしながら、本当に楽しいコト、納得のいくモノをつくっていく会社。「夢に手足を。」は本当に素敵なコンセプトだと思った。
・経営の面でも、ほぼ日はレオスが目指す一つの姿。ほぼ日が売っているのは「夢に、手足を。」で、手帳はある意味そのおまけ。レオスも、投資信託の会社だけれど、投資信託はおまけのようなもので、将来の不安をなくす、生活を豊かにするという夢を売っている会社だと思っている。
根強いファンがいる会社、社員と顧客、取引先といった会社を取り巻く人々が同じ方向を向いている会社、というのは強いと思います。
所感
個人的に良かったのは、レオスのチーム運用の強さを確認できたことです。
「何をしてもいい」という運用部。各メンバーが、セクターや規模に関わらず、自由にいい企業を発掘できる環境のもと、ひふみ全体のパフォーマンスをあげるという共通目標を共有し、指示がなくてもメンバー同士が自律的に連携して価値を生み出している、と藤野さんも話しました。
メディアは、カリスマファンドマネージャー的に藤野さんを取り上げ、ひふみ投信=藤野英人のように語りがちです。昔は自分も同じイメージでしたが、報告会を通じて、ひふみの強さの基本はチーム力にあることがよく分かりました。
規模が大きくなり、船の舵取りも大変とは思いますが、チームの力で着実に進んでいってもらいたいです。
【過去記事】