セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

鎌倉投信・第6回「結い2101」受益者総会(その2)

京都で行われた、鎌倉投信「結い2101」の第6回受益者総会の参加メモです。

(前半記事)

後半は、「結い2101」の運用報告以外のパートのレビューです。(長めです。)



総会のプログラムはこちら。
「結い 2101」第6回受益者総会のお知らせ

●ダックス四国・且田社長対談

運用報告の後は、投資先企業エフピコの特例子会社、ダックス四国の且田久雄社長と、運用責任者新井さんの対談。

且田さんは、エフピコグループで障碍者雇用を長年引っ張ってきた方です。
今年の年初、東京での講演に参加しました。

障碍者を「守るべき弱い存在」と扱わず、本来の能力を引き出し自立をうながす且田さんの取り組みは、労働力が減っていく日本で、本当の意味でのダイバーシティを考えるヒントになります。



●「九神ファームめむろ」のSROI(社会的投資収益率)評価

エフピコ関連では、事業の社会的な価値を貨幣価値で定量評価する、SROI(社会的投資収益率)の事例が紹介されていて、興味深かったです。

ダックス四国と、取引先の惣菜会社クック・チャム、北海道の芽室町が協働して障碍者雇用を行っている「九神ファームめむろ」のプロジェクトでは、社会的便益÷費用で求めたSROI=11.53と評価されています。
これは、海外の障碍者就労支援プロジェクトと比較しても非常に高いとのこと。

SROIはもともと、ソーシャルビジネスやNPOなどの事業評価手法です。それを投資信託の運用会社が評価して、投資先にフィードバックするという試みは鎌倉投信ならではです。測定方法などまだ課題も多いようですが、投資家からみても、ファンドへの投資を通じて、どのような社会的なリターンが生まれているのか、具体的にイメージできます。

※今回実際にSROI評価を行った、公共経営・社会戦略研究所のHPでは、マイクロソフトのIT就労支援などいろいろな社会的プログラムのSROI評価が載っています。

●日本環境設計・岩元美智彦さん講演

受益者総会のメインは、日本環境設計の岩元社長による「いい会社の経営者」講演。
日本環境設計は、古着からバイオエタノールを作る高い技術と、消費者、流通業界を巻き込んだ回収ネットワークを構築して、リサイクル分野で革新を起こしているベンチャーです。

つい先日、東京の環境関係のイベントで講演を聴き、懇親会でもお話できました。

→(関連記事)
日本環境設計・岩元美智彦さん講演「環境とリサイクル・100年後の未来」

リサイクルを「難しい」「面倒」ではなく、「楽しい」「簡単」「身近」なものにして、われわれ消費者がすすんで参加したくなる仕組みを作ったのが、「FUKU-FUKUプロジェクト」「PLA-PLUSプロジェクト」のポイントです。

実際に、150社もの大企業を説得して巻き込んでいくには、大変な苦労があったでしょうが、岩元さんの凄いところは、それを感じさせないポジティブなパワーだと思います。

日本環境設計のホットな話題は、これです。
FUKU-FUKU×BTTF Go!デロリアン走行プロジェクト



21歳の時に観た、バック・トゥ・ザ・フューチャー?の、ゴミを燃料にしたデロリアンを、映画と同じ30年後の2015年10月21日に走らせるという夢を、本当に実現させてしまう情熱は凄いです。(映画で使ったホンモノです)

デロリアンプロジェクトの後にも、大きな発表が控えているような話もあり楽しみです。
岩元さんは、気さくで明るく、お酒が入れば薩摩男子らしい豪快な一面もあって、人間的にもとても魅力的な方です。

岩元さんは、NPO法人いい会社をふやしましょうの「いい会社の理念経営塾」で、10/7に登壇予定ですので、東京近辺でお話を聴きたい方はぜひどうぞ。


●「循環型社会」に向けたパネルディスカッション

最後のパートは、共生をテーマにしたディスカッション。
パネラーは、トビムシ竹本吉輝さん、IKEUCHI ORGANIC池内計司さん、マイファーム西辻一真さん、そしてパタゴニア日本支社の篠健司さんというメンバー。

岩元さんの講演は、回収&リサイクルにスポットが当たっていましたが、パネルでは「できるだけリサイクルしないこと」が語られていたのが逆説的で面白かったです。

これは、「リサイクルせずに捨てよう」ではなく、「できるだけリサイクルにまわさずに、長く使えるようなものを作って大事に使おう」という意味です。

パタゴニア篠さんが「リサイクルは最終手段。それ以前に、サプライチェーン全体で可能なかぎりの環境配慮をする」という企業のあり方を述べていました。
商品を購入し、消費する生活者の行動のあり方にもそのまま当てはまる気がしました。

「水の循環」という視点では、森のクッション機能が失われ、水循環の中で淡水でとどまる時間が昔より短くなっていること、人間が利用できる水そのものが減っていることが指摘されました。

水資源は、モノや農産物の生産過程で大量に消費されているのですが、商品となった段階ではすでに流れてしまって見えません。
水を飲んだり生活用水として使う場合以外にも、日々の消費生活の中で、「どこから来たどんな水をどのくらい使っているのか」と考えてみることもたしかに大事です。

●企業展示

午前中の企業展示は、例年同様、投資先企業や鎌倉投信とかかわりのある企業がブースを出しました。

午前中は会場の外で誘導係だったので、あまり見られませんでしたが、去年を上回る盛況ぶりでした。
空いた時間に、唯一パタゴニアの「環境的・社会的イニシアティブ」レポートを頂いてきました。




●所感

今回の総会のテーマは、「循環型社会」でした。
単に「エコ」「環境」の視点ではなく、地域の中のお金や人の循環、農林漁業の六次産業化を通した自然の循環といった、大きい意味での「持続可能性」がテーマになっていて、共感と学びが多かったです。

自分も「安いもの」「便利なもの」につい目が向きがちです。
でも、負担にならない範囲で、買うとき、使うとき、捨てるときそれぞれのタイミングで、生活者がほんの少し環境負荷に目を向ける、環境に配慮する視点を持てば、社会はかなり変わっていくでしょう。
これは、モノを買うときだけでなく、企業や投資先を選ぶ上でも同様だと思います。

総会全体としては、去年のヤマトHDのように、大企業、上場会社の登壇や展示がもうちょっとあってもよかったかなと思いますが、今年のテーマ的にはコンセプトがはっきりしていてこれはこれで分かりやすかったです。

特に、古着を原料にしたエタノールでデロリアンを走らせるという日本環境設計の岩元さんの話は、現在進行形で、インパクトが大きかったです。

個人としては、運営ボランティアとして参加できていい思い出になりました。運用会社との一体感を感じましたし、社員さんとの距離も縮まりました。

終了後は、お一人でブースを出していたHASUNAさんの後片付けを手伝ったりしましたが、遠方までわざわざ来て頂ける参加企業の想いを感じて、感謝の気持ちを持ちました。


(終了後の懇親会。)

700人もの人が動いたイベントなので、運営はそれなりに大変です。受益者の増加とともに参加者も増えています。次回こそ1,000人超えも現実的なので、我こそはという方はぜひボランティアスタッフとしても参加してみてください。


(受益者仲間で3次会。)

マーケットの調整を受けて、新井さんも新規企業の組み入れに意欲的なコメントをしていましたし、新しい「いい会社」にふれるチャンスも増えそう?です。
鎌倉投信のみなさん、参加者の方々、一緒にボランティアをやった方々、ありがとうございました。